09

鉄華団を追い詰めた俺の前に現れたのは、親友だと思っていた男の姿だった。
アインを、カルタを。俺すらも、利用しようとするマクギリスの姿を目の当たりにしても、信じたくはなかった。信じられるはずがなかった。

「マクギリス、カルタはお前に恋焦がれていたんだぞ!今際の際もお前の名前を呼んで、お前を想って死んでいった!
妹だって、お前にならば信頼して任せられると‥。」

「アルミリアについては安心するといい。彼女の幸せは保証しよう。
勿論、お前が恋い焦がれてやまないルチアもお前の代わりに守ると約束しよう。」

マクギリスの言葉に、ルチアとアルミリアの姿が浮かぶ。
ああ、そうだ。俺はまだルチアの答えを聞いていない。
絶対に帰ってきてと言った彼女の言葉を裏切るわけにはいかなかった。
たとえ、親友だった男を敵に回したとしても。

「うわァあああっ、マクギリスーっ!」

「そうだ、ガエリオ。私への憎しみを、怒りをぶつけてくるといい。友情、愛情、信頼‥そんななまぬるい感情は私には残念ながら届かない。
‥怒りの中で生きていた私には。」

マクギリスの言葉を最後に、襲い来る衝撃に、次第に自分の意識が遠のくのを感じた。
こんな所で終わるわけにはいかないと願っても
、願いもむなしく、視界はぼやけていった。

「ガエリオ‥お前に語った言葉に嘘はない。ギャラルホルンを正しい方向に導くためにはお前とアインが必要だった。
‥そしてお前は私の生涯ただ一人の友人だったよ。」

膝をつき、崩れ落ちるキマリスを前に、荒野に佇むのはマクギリスの乗る赤き機体のみだった。