或る爆弾

敦は一旦探偵社へ引き取られ…というより面接なしに入社し、社員寮で過ごすこととなった。
寝床がなかった敦にしてみれば例えボロ臭い社員寮も雲の上の宮殿らしい。
そう、幸せを実感していると太宰から電話が掛かってきらしく不馴れな携帯に手を伸ばし釦をあれよこれよと触りまくった挙げ句、どうやら通話の釦に押せたようだ。
太宰から発せられた言葉は戯けさなしの真面目な口調で危機だと知らせるが…一体何が危機なのか皆目検討つかないまま、太宰に指示させれた通りに外へ出れば寮の庭にちょこんとドラム缶が置いてあり、その中には太宰という人間が埋まっていたのだ。
埋まっているというよりも嵌まっているという表現が相応しいだろう。
どうやらこうなった経緯は敵の襲撃で罠に嵌ったのではなく、普通に自分で入ったらしい。自分で入って奥深く入り込んでしまい自身の力では抜け出せなくなったらしい
太宰を引き上げた(ドラム缶を転がして)あと、敦は自分が武装探偵社に相応しいかというのを考えていた。
武装探偵社の社員の殆どが異能力を使うと聞いてはいる。そして、自分も異能力者といういうことも…。
しかし、敦の能力__【月下獣】は文字通り獣に変身するのだろうが、彼は変身時の記憶が全くない。
つまり、他の異能力とは違い自分では制御できないのだ。

それがネックで敦はつい探偵社の入社を断った。
すると、太宰は敦ができるような仕事へ斡旋すると云って今現在、街中を歩いていたのだが、それが国木田に見つかってしまったのだ。


「こんな所に居ったか太宰!この包帯無駄遣い装置が!」
「っ嗚呼〜!!国木田君、今の呼び名やるじゃないか…」
 包帯無駄遣い装置?!!・・・ちょっと傷ついた。

「誰が者の信頼を一身に浴する男だっお前が浴びているのは、文句と呪いと苦情の電話だ!」
文句と呪いと苦情の電話…の意味不明な三拍子で片づける国木田とは変わり太宰は苦情と云う単語に少し不満があるようだったが、国木田が【理想】の手帳を広げこれまでにあった太宰の苦情…というよりも大半は自殺が原因の入電を読み上げた。
中には、某茶屋の半年分のツケの支払いを促す電話もあったが。
それを聞いた敦は太宰に仕事を斡旋してくれることを当初とは異なり不安に思っていた。

「おお、そうだ!太宰の馬鹿を相手にして一分無駄にしてしまった…。探偵社に急ぐぞ!」
そう云って太宰の胸ぐらを掴めば、太宰は心底嫌そうに、「何で?」と聞く。

「緊急事態だ。爆弾魔が人質を取って探偵社に立て込んでいるらしい。人質の中には清水も居るようだ」
そう付け足すように云えば色んな意味で目の色が変わった太宰。

「爆弾魔?…清水さんが人質?」
唐突に知らされた事件、そして助けてくれた恩人の一人の命が危険に晒されていることに敦はどうしたらいいのか頭を抱えられずにいられなかった。


prev | next
【bookmark】
BACK TO TOP

ALICE+