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「時代劇ミュージカル?」
ある時、真斗は世羅を自室もとい蘭丸の部屋に呼び込み件のオーディション用の台本を机に差出し、世羅はそれを覗き込んで呟いた。
「はい。社長にこの関係者の方がデビューライブの時に目を付けて頂いたと…お聞きしました」
オーディションを受ける経緯に相槌を打つと気になるタイトルに目を向けた。
「『正義の歌う剣士 響…歌、何て読むんだ?」
「響歌右衛門です」
「あ、そう。で…受けるのか」
「はい。折角頂いた話を無下には出来ません。それに、俺の活躍がうた☆プリアワードに影響するので尚更…」
なるほど。そういうことか。先日、翔が龍也と共演したドラマがOA(オンエア)され話題を呼び、ST☆RISHの知名度はそこそこの人間に知れ渡っただろう。
そして、次ST☆RISHを引き立たせる番は真斗ということだ。
しかし、ここで一つ気がかりなことがあった
「真面目だな…ところで、君は何故態々僕を呼んだんだ?七海君でもいいだろうに」
「七海には既に報告しました。曲は七海の曲で歌おうと思っているので。それにもし受かったらこのミュージカルは先輩にも観に来ていただきたくて」
仄かに頬を赤く染める真斗。
あまり異性を自分の公演に誘うということがないということが彼の顔を見て一目で分かる。
「…そうか。まあ僕は君の同伴者だし、もし受かったとしたらそれは君にとっての晴れの舞台だ。その時はありがたく見学させて貰うよ」
そう言えばすくっと立ち上がり、失礼するよと一言声を掛けてドアまで送り届けてくれた真斗の向き合ってこう言った。
「オーディション…頑張れよ」
世羅からは思いもよらない応援の言葉に驚いたのか真斗は一瞬目を見開いたが、ふっと笑って「はい」と返事した。
その真っ直ぐな迷いのない返事に頷いて真斗の部屋を後にした世羅であった。
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――朝 噴水前
「ふあーぁぁ〜…やっぱり自室のベットで寝るのも良いけどいい天気の時はベンチで寝るのもいいな」
そう言いながらも大きな欠伸は続く。体を伸ばしたり、足をバタつかせたりしてまるで子供のようだ。
ふと、そんな祝福に時間をぶち壊す声が聞こえてきた
「朝は一人で起きろ!」
「カミュは早すぎです!」
「煩い」
「はあー、朝から聞きたくない声が聞こえてきた」
心底うんざりな嫌な顔をして、いつもは首元にぶら下がっているモノを探すが空気を切るだけだった。今日は偶然持ち合わせていなかった愛用のヘッドホンがないことに気づき軽く舌打ちした世羅は仕方なしにフードを被りそっぽを向いて両耳を力任せに封じた
早く行け…早く行け…とそう念じながら。
「明日は早朝から番組見学だ」
「えぇ!?」
「人を魅了するのがアイドルというもの。多少の苦労で不満を言うな。…」
「?カミュ?どうしたのですか?急に立ち止まって」
「…いや、何でもない。先に行っていろ」
どうやら終わったようだ。足音がばらけて聞こえる。
世羅はふうと緊張が解けたように一息ついた。がそれが束の間、
「何をしている」
「!?」
どうやら"話"は終わったようだが、地獄は終わらないようだ。
世の中、上手くいかない。
念じていたつもりがその思いが強すぎたのか逆に引き寄せてしまった。
仕方なしにむくっと起き上がりベンチの正しい使い方に変えた世羅は質問に対しこう答えた。
「別に…」
「抜かせ。…貴様、まさか仕事を放棄して居眠りか」
「はっ、仕事?伯爵殿はこの居眠りを疲労からだとは考えないのか」
その意味深な発言をカミュは見逃さない。回りくどいのは嫌いなのだ、お互いに。
少し考えてからカミュが口を開いた
「…ST☆RISHか」
「御名答」
"それ位耐えろ"とでも言いたげな表情に口角を上げふっと笑って、盛大に足を組みカミュを見上げる。
「そんなにキツイのか」
「キツイってもんじゃないな。あれは」
そう、あれはキツイという生易しい言葉では片付けられない程に困難である。
翔や七海を見て居る限り似た者同士だった。
これがあと6人居ると思うと、自然と頭痛がして来た。
「ぬるいな」
「煩いよ伯爵殿、君も一度見てみるよ良い。君の場合、半日で精神が半壊しそうだけどね」
「ふん、貴様と一緒にするでないわ」
「だから、その台詞そっくりそのまま返すよ」
今二人の間に、春には似つかない吹雪のような冷たい風が吹き渡っている。しかし、どこかその吹雪は絶対零度とは遠くかけ離れていて__心地よかった。
「何故早乙女はこの仕事に貴様を指名した」
「仕事っていうか、お手伝い?義父さんも僕が仕事がなくて暇だと分かっていて指令を出したんだと思うよ」
「まあ何であれ、さっさと行け!ここは作曲家だろうが編曲家だろうがアイドルだろうが容赦しない。仕事を放棄する者は即刻首を切られるぞ、…世羅」
「はいはい、ご忠告どうもありがとう…カミュ」
そう言って寮へと戻っていく世羅の後姿を見つめてからカミュも目的地へと足を進めた。