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「っ、たい…痛い痛い痛い。腕を引っ張るなもげるだろうっ」
「ふん、貴様が車内で俺に対して侮辱した報いだ」
「思ったことを素直に口にして何が悪いんだ?それだったら人を見下す伯爵殿だって同じではないか」
「貴様と一緒にするな」
「その台詞、そっくりそのまま返すよ」
「黙れ愚民」


そんなこんなで、相変わらず外面は完璧なる執事キャラで送迎車の運転手の男性までも虜にした危険な男。
しかし、車が走り去っていくのを見てからというもの形勢逆転。
今度はカミュが世羅を痛め付ける番だ。
痛め付けるといっても暴力的ではなく、ただ、単に思い切り力を込めて腕を引っ張った程度だが、世羅にとってはその痛みは尋常ではない。

所変わって、場所はマスターコース寮。
カミュは相変わらず世羅の腕を引っ張って素知らぬ顔でスタスタ歩いている。
逆に言えば、世羅はそのカミュとの身長差に引き摺られるように付いていっている。

しかし、目的地が違うことに世羅は気づく。既にカミュの部屋がある男子寮は通り過ぎているというのにだ。

「おい、男子寮過ぎているよ」
「分かっている。黙ってついて来い」

親切に伝えたつもりがそれが仇となって返ってきた。
最早、付いていくようにさり気無く彼の踵を蹴りたくっても多少は怒られない気さえも起こってきた。

なんやかんや言ってロビーに着いたはいいが、どこからか、大声が聞こえる。いや、大声と言うより怒声だが…その声はロビーの扉の向こうからのようだ。
大方、先日より配属された彼らだろう。…と世羅が最早お決まりのような溜め息を溢す。

「はあ。このふざけた企画実行から数日たって今更だが随分と今回の企画は賑やかになるな…悪い意味で」

「…何処へ行く」
「自室に帰る」

そう言い踵を返して自室へ戻ろうとしてカミュに止められた。
止まるつもりはなかったがふとある疑問が過ぎり歩む足を一回止め振り返る。

「伯爵殿、今回この企画は一体何のためにあると君は思うか?」

唐突に聞かれカミュは眉間に皺を寄せる。
そもそもこのマスターコースという計画は今に始まったことではないが、何のため?そんなの決まっている。

「新人の育成だろう。その他に何がある」
「…ふぅん。そうか、育成ね」

何か言いたげな世羅の様子にカミュが言うように促すも結局はぐらかされたまま彼女は女子寮へと消えた。
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