世界なら


「神様!?」

「え、でも・・・大仏とか仁王像って素材にはなるけど、攻撃とかはできないじゃ・・・」

「おいおい、そんなわけないだろう?」

「俺たちは、刀の付喪神だぜ、戦いはお手の物、ってなぁ!」


そろって手に持つ大きな刀を、カチンと鳴らしてみせる二人。
その誇らしげな様子に「はぁ・・・」とため息とも相槌ともつかない声を漏らして、そっと視線を逸らした。
突然見知らぬ土地で目覚めた俺と木兎さんが困惑しているところに、これまた突然現れた二人。
一人は金髪にめちゃくちゃでかい黒のファーを巻いていて、もう一人は赤い着物に新撰組の羽織。
正直普通に街中ですれ違ったらそっと距離を取るようなタイプの人たちに、突然「俺たちが守ってやるからロストの中心とやらに向かえ!」と言われて、「おう、わかった!」と言えるのなんて木兎さんくらいだろう。
実際、「あっちか!?」と走り出した木兎さんを三人でぽかんと見送る羽目になってしまったし。
普段の耐性からいち早く我に返って慌ててそれを追いかけ、そのあとを二人も追って来て。
「すげえな、アイツ」と自分と同じ声の金髪に苦笑交じりに言われたときの俺の気持ち、木兎さんに察してほしい。
今は何となく同行者みたいな体で隣を歩いているけれど、前の方で意気投合したらしい木兎さんの声×2は楽し気に話しているし。


「刀っつってたけど、名前とかあるのか?お前の羽織もカッコイイよなー!」

「おっ、お前わかってるじゃねえか!そうさ、この羽織は新撰組の誇り!俺は土方さんに使われてたんだぜ!」

「うおおおマジか!?スゲー!」


声は全く同じで、テンションも近いものがある。紛らわしいことこの上ない。
耳に入るだけで頭が痛くなりそうなそれらを意識的にシャットアウトして、何故か自分の隣を上機嫌で歩く金髪に恐る恐る声をかけた。


「・・・あの、何で俺たちを守ってくれるんですか。特に刀を大事にした覚えはっ!?」


ないんですけど、と続けようとした言葉は、突然頭を抑えつけられたことで悲鳴に変わる。
その瞬間ヒュン、と頭の上を何かが通り過ぎた感覚に、血の気が引くのをまざまざと感じた。
今、この人に、頭を抑えられていなかったら。


「おっ、おいでなすったなぁ?」

「随分な挨拶じゃねえか。完全に俺たちを敵だと思ってるみたいだな」

「お前もあっち行ってな!」


ドン、と肩を押された木兎さんが、戸惑いながらも少し慌てて新撰組の人から離れてこちらへ近付いてくる。
それと入れ替わるように金髪が新撰組に走り寄って、さらにその先に居る存在に、息をのんだ。
アレが―――タマシイ。


「む・・・無理です、逃げましょう!」

「はぁ?逃げるだぁ?」


思わず口をついた言葉だったけれど、思いは変わらない。
あんな、浮いてて、なんかよくわかんない力で攻撃してきて、めっちゃこっち睨んでるやつに、敵うはずがない!


「逃げるって赤葦ィ、お前どこに逃げればいいのか知ってんのか?」

「それは・・・わかりませんけど、でもあんなの相手にするより・・・!」


キュイン、とタマシイに謎の光が集まる。
この光景は、小さなスマホの画面内なら、さんざん目にしたもの。
攻撃が―――来る!


「危な・・・」

「ぅおりゃっ!」


一閃。
タマシイの攻撃が来るより早く、速く。
一瞬で抜刀した金髪の刀が、タマシイの身体を両断していた。


「・・・・・・は、」

「そういや、まだ名乗ってなかったな」


消滅していくタマシイに、チン、と刀を納める金髪。
新撰組も戦闘態勢を解いて、その戦闘がすでに終わったことを証明していた。
クルリと振り返った二人の表情に、気負いはない。


「オレは和泉守兼定。かっこ良くて強い!最近流行りの刀だぜ!」

「俺の名は獅子王!黒漆太刀拵も恰好いいだろ?」

「お前ら二人とも恰好いいぜー!俺は木兎光太郎だ!ヘイヘーイ!」

「・・・・・・赤葦、京治・・・です」


あまりに一瞬の戦いに、頭が付いていかない。
あっさりと順応している木兎さんを改めてすごいなと普段とは別の意味で尊敬していれば、「さ、行くぜー!」とさっさと先へ行ってしまって、慌てて追いかけた。
ここがロスト都市の世界だということにまだ半信半疑な部分があったけれど、あんなものまで見てしまったらもう疑いようがない。
助けてくれるつもりなのは本当なようだし、今はこの人たちに付いていくしかないのだろう。


「けどすげー強えんだな!やっぱり自分を振るのってなんかわかるモン?俺もボールになったらもっと強くなれっかな!?」

「ボールの付喪神がいたら強いかもなー」

「マジ!?いんの!?」

「俺は会ったことないな」


・・・この人たちも、タマシイなのだろうか?
自分がよくパーティーに組み込んでいるキャラを思い浮かべて、もう一度木兎さんと馬鹿みたいな話をしている刀の付喪神だという二人を見て。
・・・この人たちならビジュアル的にも頷けるな、となんとなく納得した。


「・・・そういえば、俺たちスフィアを集めなくていいんですか?」


ロスト都市は、スフィアという光の球みたいなものを集めるゲームだ。
さっきのタマシイにも俺たちが何もしないうちに攻撃していたし、今はただ安全そうな道を選んで進んでいるだけ。
これがゲームだったら絶対に開発費と見合わないな、とか考えていると、「できれば集めてくれるか?」と前を歩く金髪・・・獅子王が振り返った。


「俺たちの力の源は別にあるんだけどよ。こっちの力も集めてもらえたら使えるから、負担は少なくて済むんだ」

「ちなみに俺は赤の!」

「俺は黄色のスフィアが力の源だぜ!」

「・・・探してみます」


ビッ、と自分に親指を突き付けてポーズを付ける二人のテンションが木兎さんと似ているということはよーくわかった。
それ以外のことではわからないことだらけだけど、とにかく。
生きて元の世界に戻るためには、この人たちに協力するのが一番、らしい。


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