13
通りすぎる姫に思わず名前を呼んでしまったが、姫は立ち止まることなく出ていき、胸中に苦いものが広がっていく。
やはり、俺のことを怨んでいるのだろうか。
姫の家庭教師になり、生徒であるはずの姫をいつの間にか愛していた。
家庭教師が生徒を好きになることはダメなわけじゃねぇ。
確かに家庭教師だが、それ以前に俺は世界一のヒットマンで地位も名誉も金もあった。
だから姫の家庭教師をやめて、付き合っても何ら問題なかったはずなのに、当時はどんどん姫を好きになっていく自分が怖かった。
今まで、こんなにも愛しいと思ったことはない。
適当に女と遊んでいればいいと思っていた。
…なのに、本気で好きになって、自分が自分でなくなりそうな感覚にあの頃は恐怖を感じて俺は姫の家庭教師をおりたんだ。
オルマーノのボスは姫になんて伝えたのかは知らねぇが姫が俺のことをよく思わないはずがない。
そう思ってしまったら少しだけ胸の奥が痛んだ。
「…ねぇリボーン」
「何だ。報告書ならこれだぞ」
「姫とどういう関係?」
あぁ、厄介だ。
ツナの目は好奇心に光っていて、しかも何となく真実を予想している。
面倒くせぇな、と呟きながらその問いには答えず持ってきた報告書を投げつけた。
「さっさと仕事しろ、ダメツナ」
「…ま、いいけどね」
ていうかダメツナって言うな。
真っ黒な笑顔を浮かべながらそう言うツナにやはり何も答えず、俺は踵を返す。
何故かその時、姫がリボーン、と俺を呼んだ気がした。
(そんなこと、気のせいにきまってんのにな。)
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