17



ごちそうさま、と言って沢田様は談話室を出ていかれた。
どうやらお気に召されたようで三切れも綺麗に食べてくれたので私も作ったかいがあった。
まぁ、最初から沢田様のために作ったわけじゃないが。
今度また何か作って差し入れよう、と思いながら残ったガトーショコラを切って早速私も食べてみる。
ショコラの甘さが丁度よくて、自分でもおいしい、なんて心の中で自画自賛。

紅茶もおいしいし、完璧と思っているとどこからか小さな黄色の鳥が飛んでくる。
あら、と首を傾げているとその小鳥はちょこん、とソファーの縁にとまった。

どこから入ってきたのかな…確かボンゴレの屋敷は鳥でも入れないように警備されていると聞いていたのだけど……

不思議に思っていたのだが、どうやらこの小鳥さんは中々どうして頭がよろしいようで食べたそうにガトーショコラを見つめながらも絶対に自分から突かない。
その代わり「食べたい!」と人間の私でもわかってしまうくらいつぶらな瞳を向けてくる。

その様子がとっても可愛くて母性本能をくすぐられてしまう。
くすり、と笑うと「おいで」と驚かせないように小さな声で呼んでみる。



「オイデオイデ!」

「まぁ、おしゃべりできるの?」

「デキル!」

「ふふ、すごいね」

「スゴイ!スゴイ!」

「はい、これ食べてもいいよ」



少しだけ残ったガトーショコラを差し出すと嬉しそうにそれを啄む小鳥さんに思わず顔が綻ぶ。
ちょっと撫でてみると「オイシイ!」って言ってくれたから可愛くて仕方なくなってしまった。
よしよし、と撫で続けていると何やらお歌を歌い出した。
うーん、何の曲だろう?日本の歌っぽいけど…
それにしても歌まで歌えるなんてこの子は本当に賢い。
誰かのペットなのかな、と想像してみたが誰かまではわからなかった。
するとドアが勢いよく開かれて、びっくりして視線を向ければ誰でもない、恭弥がそこにいた。



「…あぁ、こんなとこにいたの」

「え…?」

「それ、僕んとこの」

「…えぇ!?」



最初は私を探していたのかと思っていたらどうやらその小鳥さんを探していたようだ。
ていうか恭弥の飼ってる小鳥さんだったとは…
小鳥さんは「ヒバリ!」と言って恭弥の方に飛んでいくと定位置のようにぽふん、と恭弥の頭の上に乗っかった。



「迷惑かけたね」

「いえ!可愛くて、癒されました」

「カワイイ!」



落ち着いている小鳥さんににっこり微笑めば「…ふぅん、」と恭弥が小さく呟く。
どうしたんだろう、と首を傾げるが恭弥は何もそれ以上言うことはなかった。

- 17 -

*前次#


ページ:

top
ALICE+