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お習い事、嘘とお世辞に塗られた社交界、それらをうんざりしながら偽りの笑顔でかわして夕食を久しぶりにゆっくり父と過ごす。
父はとても厳しい人だが、精一杯の愛情を私に注いでくれる。
今日もたわいのない話をしていると、ふと父がオルマーノファミリーのボスの顔つきになり、小さく緊張がその場に走る。
何か、ある。
そう直感が告げるのと同時に私はフォークとナイフを置き、真っすぐ父を見つめた。
「姫、お前に縁談がある」
「…はい」
「ボンゴレファミリーボス、沢田綱吉殿だ」
「…!ボンゴレ…」
小さく呟いた名はイタリアンマフィアの中で知らぬものはいないほど有名かつ巨大組織だ。
しかも、社交界のお姉様方の噂によるとボンゴレボス、沢田綱吉はたくさんの愛人がおり生粋の遊び人だという。
みんながみんな「正妻が出来てもお飾り」とか「私も愛人になりたいわ」とか言っていて、女性関係でいい噂は聞いたことがない。
…そんな人の、正妻。
確かに私はこの巨大組織のボスの一人娘なのだからいつかはどこぞの家に嫁ぐと覚悟はしていた。
けれど、まさかボンゴレとは……
自然と眉が情けなく下がっていたようで父まで少し苦い顔をする。
「お前が考えていることはわかる。
だが、ボンゴレと我がオルマーノが同盟を結べば争いが減ることは明らかだ」
「わかっております、お父様。
元より私に拒否権などないことは充分承知しております。
この大好きなオルマーノのために、」
この身は捨てたも同然なのだから…。
そう言いかけたがそれは余りにも父を傷つける言葉のように思えて静かに微笑み、言葉をつぐむ。
父は少しだけ悲しそうにしながらも「明日、沢田殿と食事がある。おめかししなさい」と言ったのだった。
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