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時間が空いたらきてほしい、という伝言を受けてオルマーノの仕事を一段落させると私は沢田様の執務室まで歩を進める。
控えめにドアをノックすると中から沢田様の声が聞こえて、失礼します、と断りを入れて入った。



「昨日伝えたパーティーだけど、日にちは一ヶ月後。
まぁ招くファミリーは同盟ファミリーの中でも友好的なところを呼ぶつもりだよ。
あと、姫が主役だからそれなりのドレスを着てもらうことになる」

「はい」

「…で、そのドレスは俺と決めに行くから」

「…!?…わかりました」



まさか沢田様自身が私なんかのために動くとは思わなかった。
…いや、結局ボンゴレのためになるんだ。
馬鹿みたいな話だけどドレス一つでその人とその周りの経済力をはかる人間もいる。ていうかほとんどの人間がそう。
一番目に見える形だからかもしれないけれど、ドレス何かで決められるのは本当に馬鹿らしいと思う。
沢田様もそれをわかってそうおっしゃったのだろう。



「姫に一番似合うの、選んであげるよ。光栄に思って」

「(偉そう…)はい。ありがとうございます」



少しイラッとしたがにっこり笑って誤魔化してみる。
これぐらいできないと、ね。

どうやらドレス発注は3日後、ボンゴレ御用達のお店を貸し切りにしているらしい。
たったドレスを決めるだけでお店を貸し切るなんてお金持ちの考えることは無駄が多い、と内心呆れる。
また3日後にね、と言われてそれに返事してから部屋に戻ることにした。



「…あ、そうだ!」

「何でしょう」

「初めてのデートなんだから可愛くしてきてね」



にっこり。

そんな擬音語が似合うような笑顔を浮かべたから、何の意図もなさそうな言葉に私は何故か赤面してしまった。
多分その裏の意味とか全くないように感じてしまったからだろう。

何て答えればよかったのかわからず何とも言えない顔をしてから小さく苦笑する。
沢田様の言葉にと、自分の反応の仕方に。
こんなこと、まともに受けずに流してしまえばいいものを…それくらいできるはずなのに何故できなかったのだろう。

苦笑した私に沢田様は何を感じとったのか、



「期待してるよ」



と、にやりと笑った。

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