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どうやら恭弥も運転できるらしく、私が走って追いついた時にはすでにもう車の運転席に座っていた。
補助席に乗りな、と言われてとりあえず補助席に乗り込み、シートベルトをした瞬間ぐんっと勢いよく車が出発する。
それはもうジェットコースター。本気でシートベルトで首絞まった。
息がつまる、と眉をひそめながらちらりと隣をみるとすごく楽しそうな恭弥の顔。

あぁなるほど…これがスピード狂ってやつね…。

幸い私はあまり車酔いとかしないので超安全だけど逆にひやひやするという運転のもと恭弥が選んだお店へと直行したのだった。



「ついたよ」

「…ありがとうございます」

「へぇ、よく酔わなかったね」



辛うじて言葉を発すると恭弥は再び楽しそうな笑みを浮かべた。
草壁なんてすぐに酔ったよ、と言われて(確か草壁さんは恭弥の腹心の部下だったはず)そうだろうな、と苦笑した。
これで気分が悪くならないのは運転している恭弥だけだと思う。

…リボーンはあぁ見えて紳士だから私が助手席にいるときはかなりゆっくり運転してくれたっけ……

ちくり、と少し痛んだ胸に再び苦笑すると恭弥がいきなりムスッとし始めた。
え、なんで拗ねちゃったの…?



「君って本当にわかりやすい子だね」

「……?」

「…はぁ。まぁいいよ」



早く行くよ、と急かされて疑問の答えを考える暇もなく私は急いで恭弥の後を追った。
追って、着いたのはカジュアルそうな可愛いブティック。
恭弥がこんなお店を知っていたことに少し驚いたが「前の愛人がこの店の店長でね」と言われて何だか複雑な気分になった。
(前の愛人のお店って…普通行けるの!?)

こんな私の心情を恭弥が知るはずもなく、恭弥は何の躊躇いもなくその店に入っていった。
ちりん、という古風な音と共にお洒落な空間が目の前に広がってさすがの私も少しわくわくし始めた。
やっぱり女の子だからね、可愛いものには目がないの。

いらっしゃいませ、という女性の柔らかな声が聞こえてきてカウンターから声と同じように柔和な笑みを浮かべた女性が出てきた。



「お久しゅうございます、雲雀様」

「久しぶり。元気にしてた?」

「えぇ、おかげさまで。…そちらの方は確かドン・ボンゴレの奥様ですよね?
奥様までたぶらかしてはいけないのでは?」

「たぶらかしてないよ。この子の買い物に付き合ってあげてるだけ」



くすくす、と悪戯っぽく笑った彼女に私の方が焦ってしまう。

たぶらかすって!いや、浮気とかでは…!そして恭弥はなんでそんなに落ち着いて返せるの!?
…何だか大人の会話すぎてついていけない。

そうして私はただ黙っていると恭弥が「この子に似合うコーディネートしてあげて」と言われて本題に入ったことに気づく。
綺麗な女性の視線が私に向いて「じゃあ行きましょう」と促されたから思わず視線を恭弥に向けていた。
恭弥は行け、とばかりにあくびをしながら私を手で追い払うので渋々彼女についていくことに。

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