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そろそろ戻らないと、とまだここにいる、と言った恭弥に別れを告げて会場へ戻る。
きらびやかな会場に眩しさを感じながら歩いていると沢田様が女性を侍らせているのが目に入った。

側にいて世間話とか、そんな雰囲気じゃない。

男と女の駆け引きをしていることくらいすぐわかる。




「…綱吉様、今夜は…ダメ?」

「……あとでゆっくり可愛がってやるよ」




そんな囁き声が聞こえてきて、私はすぐにその場から離れて人気のない場所へ逃げ込む。

…胸が、苦しい。痛い。痛い痛い痛い。

まるでナイフで抉られたみたいに、痛い。


優しくされて、知らぬ間に自惚れていたのかもしれない。
少しは、私を認めてくれたのではないかと。

そんなはずないんだ。だって私は……




「…だだの、お飾り、だもの」




吐き出すように言い捨てたが、さらに胸が痛んだ。

喉の奥に何かが詰まったように息苦しい。
ぎゅっと胸元を押さえてその息苦しさに堪えていれば、小さな足音と共に誰かの気配。
はっ、とした一瞬は少し遅くて、誰かにハンカチで口を押さえられていた。

必死でもがくが何だかどんどん体が重くなっていく。


…クロロホルムか…っ


落ちていきそうな意識をがんばって保とうとしたが、薬の力には抗えず。
私の意識はそこでブラックアウトしていったのだった。

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