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−綱吉side−



不思議な女だと思った。

部屋に入ってくるときの印象はどこにでもいるつまらないお嬢様。
確かに顔は綺麗な方だとは思ったが特別いい体つきでもなかったし、俺と彼女の父親が話しているのをただ笑いながら聞いているだけ。
ありきたりのお嬢様。…こういうタイプって面倒なんだよな。
今は愛されていないけどいつかは愛してくれる、とか甘い考えを持って接してくる。
それで愛せないとか言うと酷いとか何だの泣きながら責めてくる。

よく考えてみろよ、会って間もない俺がすぐに心から愛せるとでも?
まぁ10年経ったってマフィアのお嬢様なんか愛せないんだけど。

俺の容姿や権力、金しか見てない女達。…吐き気がする。
愛人達だって別に愛してないけど、俺だって男だからそれなりに性欲溜まるし、ボンゴレが発展するのに使えそうな女もいたから適当に相手してるだけ。
まぁ、そんな中そろそろ身を固めろってあの元家庭教師がうるさいからちょうど縁談を持ち掛けてきたオルマーノの娘と結婚することにしたけどね。

オルマーノは同盟を結んではいないが、ボンゴレと同等なくらい昔からある巨大ファミリーだ。
敵対してるわけじゃないんだけど、同盟を結ぶまでには至らず今までその関係を曖昧にしていた。
だからそろそろそんな曖昧な関係を終わらせて同盟を組むことになり、その証として今回の結婚に結び付いたわけだけど。

それにしたって、やっぱり面倒なものは面倒だ。

ため息つきたいのを必死に我慢して、笑顔を浮かび続けると彼女の父親がトイレで席を外すことに。
若い二人で話しておきなさい、と言い残して行ったから俺は早速彼女に釘を刺した。


俺に“愛”を期待するな、と。


泣くか、いや、泣かないにしても悲しそうな顔をするか。
一体どちらの反応をするのかと見ていれば彼女はどちらでもなく、無表情で「わかりました」と頷いた。
皮肉を言えば俺に興味がない、の一言。
…興味、ない?このドン・ボンゴレである俺に?
今までの女は俺の肩書や容姿に興味を示し、擦り寄ってきたというのに。

その時は驚きで何も言わなかったが、ボンゴレの屋敷に帰ってきて思い出すと少し面白くなってきた。

少し機嫌がよくなった俺は執務室で溜まった仕事を片付けていると乱暴にドアが開かれる。
こんなことをするのは雲雀さんかリボーンだけ。

(お兄さんも乱暴に入ってくるけど、それと同時にうるさい)

一体どちらだろう、と顔を上げると不機嫌顔のリボーンがそこにいた。



「おかえり」

「今日が見合いだなんて知らなかったぞ」

「言う必要ないと思って」

「…どうだったんだ?」



言う必要ない、と言った途端生意気言うんじゃねぇ、って撃たれるかと思ったんだけど、リボーンはただ静かにそう聞いてきた。
珍しいと、思いながらその問いにゆっくりと考えを巡らせる。

どうだったか、そう言われると…。



「面白かったよ」



そう、面白かった。

今までとは違うタイプの女。
わざと気を引こうとして興味ない、と言ったのではなく、あの目は本当に興味ないと言っていた。

思い出せば本当に面白くて思わずにやり、と笑ってみせるとリボーンは何故かそうか、と呟いてボルサーノの鍔をさげた。



「どこのファミリーの女だ?」

「オルマーノだよ」

「…!?」



バッと信じられないくらいの勢いでリボーンは目線を上げて俺を見つめる。
まるで嘘だ、と信じられないように。

…なんでこんな反応なんだ…?

思わず怪訝な視線をリボーンに向けるとハッとしたように視線をずらしてわかった、とだけ言って出ていった。
何なんだ、さっきの反応は…リボーンは簡単に読心させないから全くわからなかったけど……

小さな違和感を抱えたものの深く追求せずに俺も仕事に戻ったのだった。

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