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ーーーバンッ!!
「何で見つからないんだ!」
「落ち着け、ツナ!部下に当たっても仕方ないだろ!!」
クッと拳を握り締めて苛々する気持ちを必死に抑える。
らしくねぇぜ、と山本にたしなまれてごめん、と小さく謝る。
確かにらしくなかった。苛々するからってこんなこと……
姫を浚ったファミリーの情報は未だ掴めていない。
ボンゴレの情報網と雲雀さんも協力してくれて風紀の情報網を合わせても行き詰まるなんて……
何故こうもうまくいかない?誰かが情報操作をしているのだろうか。
だとしたら一体どこの誰だ?あぁわからないことが増えていくだけだ。
こんな生産性のないこと考えたって仕方ないのに。
うまくいかない事態に再び拳を握ると「おや、荒れていますね、沢田綱吉」とむかつく笑顔を浮かべた骸が入ってくる。
いっそのこと殴ってやろうかと思うくらい憎たらしい笑みに苦々しく思っていると骸は小さく肩を竦めた。
「そんなに動揺することないでしょう。彼女は所詮、政略結婚の婚約者なんですから」
「……っ、うるさい、わかってる」
「ほう、わかってる人間の顔とは思えませんね。
まだ婚約なのだし、いつものように切り捨てればいい。簡単じゃないですか。
何故、そのようにみっともない姿を晒しながらも必死に探すのですか?」
確かに、骸の言う通りだった。
大を生かすために小を殺す。
大嫌いな考え方だが、俺がこのボンゴレのボスになって最初に身に付いた考え方。
不正は許さないが、巨大なボンゴレを保つために、見逃してきた小さな犠牲。
ボスになりたての時はそれすらも許せなくて、そんなボンゴレなんて潰してやろう、なんて思っていたけど。
やっぱり友達が、仲間がついてきてくれるこのボンゴレを壊そうなんてできなかった。
だから、今は俺の居場所であるボンゴレを守るために小さな犠牲を厭わなかった。……けど。
姫は、その小さな犠牲にすることができるのか?
もし守護者の誰かが敵に捕まったら、俺はボンゴレが潰れることを厭わず助けにいくだろう。
大切だから。大切な、ファミリーだから。
じゃあ姫は、俺にとって大切なファミリーじゃないのか?
ーーーいや、
「姫も、俺にとっては大切なファミリーの一員だから」
最初は仕方なくだった、婚約。
相手の婚約者には全く興味がなかった。誰がなっても一緒だって。
…でも、姫はいつの間にか俺の心の中に入ってきていた。
必ず、姫を助ける。
そう決心したら不思議と気持ちが落ち着いて、意識がクリアになっていく。
そんな俺に骸は満足そうに笑うと一枚の書類を懐から取り出した。
「姫の居場所がわかりましたよ」
「主犯は?」
「…それが、少々やっかいで」
どういう意味か、と眉をひそめて書類に目を通す。
その事実に俺は小さく目を見開いていた。
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