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本を読みながら少しだけ変わった屋敷の空気に私は軽く顔をあげた。

いつもなら何もないように静かな気配を保っているにもかかわらず、今日は微かに慌てている気がした。
あくまでも『気がする』だけだから私の思い違いかもしれないけど。

読んでいた本を静かに閉めると私は軽く息をついて心を落ち着かせるとシェリアルさんを備え付けのベルで呼ぶ。
ーーーこのベルは私がお手洗いやお風呂に行きたいときにシェリアルさんを呼ぶためのものだ。
それからいつもなら5分できてくれるのに今日は10分ほど経ってきたシェリアルさん。
心なしか顔色があまりよくない気がする。




「ご用でしょうか?」

「お手洗いに行きたいのですけど…」




そういうとかろうじて笑顔だったシェリアルさんの顔が微かに強ばるのがわかった。
私がこの部屋から出ることに不都合があるように……

…やっぱり何か起きてるみたいね。

でもシェリアルさんは小さく目を一瞬だけ伏せると再びにこり、と笑った。




「では今手錠を外させて頂きますね」

「ありがとうございます」




そう。このお手洗いの時間だけが唯一手錠が外れるとき。
シェリアルさんには申し訳ないけれど…私は、ボンゴレの人間。帰る場所もボンゴレなの。

手足の手錠が外されるともう一つの鎖が長い手錠を片手だけ繋げられる。
もう片方の手錠はいつものようにシェリアルさんの片腕に繋げられた。

お手洗いは部屋から出てすぐ隣。この部屋は内側から出るのに指認証だ。
シェリアルさんが指で部屋をあけてお手洗いに入るとドアを閉めるために私とシェリアルさんは向かい合う。

その瞬間、



ーーードスッ!




「…ごめんなさい」




シェリアルさんの鳩尾を殴り、気絶させる。
意識のないシェリアルさんのポケットから鍵を取り出すと、まずは腕の手錠を外した。
このままだと私が逃げ出したことがすぐバレてしまうからシェリアルさんには悪いがしばらくお手洗いで寝ててもらう。

自由の身になると私はこの屋敷にいる人間が歩いていくのを静かについていったのだった。

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