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姫が閉じ込められている屋敷はすでに銃撃戦の戦場となっていた。
だが、民間人相手だからだろう。
リボーンもやはりそこまで馬鹿じゃないから殺さないように睡眠銃を使ってるみたいだった。
ぐっすりと眠っている民間人を保護するように指示しながら俺も中に進んでいく。

民間人…つまり素人相手だからトラブルもなく激しくもない戦い。
傷つけないように手刀で気絶させるとリボーンの後ろ姿が見えた。
リボーン、と声をかける前にリボーンと対峙している男の顔に小さく顔を険しくさせる。
…この誘拐は絶対に一般人だけでは成功しない。
裏の人間が必ず幇助しているはず。
そう調査していて浮かび上がったのが…

クロア。

一般人の復讐者と名乗る一般人からのみ依頼を受けるヒットマンだ。
彼の正義は一般人でしかない。
裏の人間は全て悪と考える、裏の人間にとっては少し厄介な相手。

真っ黒なマントを纏った彼は真っ直ぐこちらを見据えていた。




「お前らが姫を浚ってんのはわかってんだ。返してもらうぞ」

「…まさかお前と対峙する日がくるとはな」




ぼそり、と呟かれた言葉と同時に二人は激しい戦闘に持ち込んだ。
息を飲むような戦い。俺は一言も話すことができなかった。
パンッとお互いに弾いたとき、「リボーン!」という焦った声。
戦闘に見入っていた俺はワンテンポ遅れてその声の持ち主を見遣ると白いワンピースをきた……姫が息を切らしてそこにたっていた。
姫、とリボーンの唇が微かに動いて、



ーーーガキンッ!



勢いよく競り合っていた銃を弾き飛ばしてリボーンは姫へ走り出した。




「姫っ!!」

「…っ、リボーン!」




躊躇いなくリボーンは姫の体を抱き締めて、小さく息をつく。
俺はただその様子を呆然と見つめることしかできなくて、いつの間にか死ぬ気の炎は消えていた。
そんな俺が見えないみたいに姫は安心したような表情でリボーンを抱き締め返していた。
(俺にはそんな顔見せない、のに)




「よかった、無事で…」

「…リボーン…」

「お前がいなくなったら、俺は…っ」




切なげなリボーンの声に俺は全てを悟る。

―――リボーンは、姫のこと……

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