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「雲雀さん、何彼女を気絶させてるんですか!」

「姫は無事みたいだね」




おい、俺のお咎めは丸っきり無視かよ!

そうツッコみたいが雲雀さんの唯我独尊は今に始まったことじゃない。
しかも無事でよかった、と姫に笑いかけて、あまつさえ頭を撫でようとしていたから慌ててさりげなく身をひいて防ぐ。
それがバレて雲雀さんの機嫌が一瞬悪くなったが俺を馬鹿にするような笑みを浮かべて「余裕のない男は嫌われるよ」と鼻で笑われた。
何が余裕のない男は嫌われる、だ。俺が余裕ないわけないだろ。
いらっとする気持ちをおさえて「…報告ください」と言うと全員咬み殺して保護した、の一言。




「こんなところで油うってないでさっさと出るよ」

「言われなくても、」

「あの、沢田様、」




珍しく口を挟んできた姫に小さく首を傾げると姫は言いにくそうにしながら小さく呟いた。

…降ろしてほしい、と。

一瞬、何のことかわからなかったが、今の状況を今更ながら思い出した。
姫をお姫様抱っこしたまま話してる。以上。




「……っ、ごめん」

「い、いえ……」




何かいきなり恥ずかしくなって思わず謝りながら姫を降ろした。
あー今絶対顔赤いよな、俺。

妙に気恥ずかしい空気に雲雀さんが俺だけに聞こえるように「空気がうざい」と呟いたのだった。

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