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"愛がないとは限らない"
その言葉にずきり、と心臓が軋んだのがわかり、私は綱吉にはわからないように目を伏せた。
その言葉は都合のいいようにしか解釈しない私には私との結婚に愛があるように聞こえる。
…そんなはずないのに。
綱吉と私の結婚に愛がないのは私も、そして一番綱吉がよくわかってるはずだ。
「俺はきっと君を愛せない。
この結婚は互いの利益のためだ」
そう初対面の時に面と向かって言われたのだから。
だから、愛がないのは当然で、さっきの言葉がただの建前だってわかっているのに……
(この胸の痛みは何?)
心臓だけきゅうっと絞められたような胸の痛みに何故か無性に泣きたくなった。
(私は、あなたのことを…)
気づいた瞬間、言い様のない感情が体を支配する。
リボーンが好きだったはずの心。綱吉を好きにならないはずの心。
それがいつの間にか変わっていたなんて……
嘘、という気持ちと、…リボーンへの報われない恋が終わっていたという小さな安堵。
本当の気持ちは、多分決まっているんだろうけど、長年引きずっていた気持ちをそう簡単に切り離すことはできなかった。
「…私、は、」
パーティーも終わって部屋に一人。
色んなことがぐるぐると頭を回って、無性に泣きたくなった。
ぐっと唇を噛み締めてその涙を堪えていると「ヒバリ!ヒバリ!」と可愛らしい鳴き声が聞こえてふと顔をあげる。
さっきの声は誰が聞いても間違えるはずのない、ヒバードの声。
どこだろう、と辺りを見渡すとぽすん、と頭に軽い衝撃。
そっと頭の上を撫でると手の上に乗って、くるりとした目を私に向けたヒバードがそこにいた。
「ヒバード…」
「ナイテル?ナイテル?」
「ううん、泣いてないよ。…ヒバードはどうしてここに?」
「ヒバリ!ヒバリ!」
「……?」
どうして、の答えにヒバリ、という単語だけで思わず首を傾げてしまった。
どういう意味だろうか…恭弥に何かあったのだろうか。
とりあえず気になってしまったので私はヒバードを連れて部屋を出たのだった。
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