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少し皺になった書類を持って山本の部屋まで向かう。
こんこん、とノックした後に聞こえた山本にオレであることを伝えると入っていいぜ!と中から聞こえてきた。

そのままドアをあけるとどうやらシャワーを浴びた後らしい山本は上半身裸で「よっ!」と軽く笑った。




「これ、山本の書類。渡しそびれてたみたいだからさ」

「サンキュー!…ん?」

「どうかした?」

「あー…ツナ、何かあったのか?」




言いにくいならいいんだけどよ。

と気まずそうにしながら心配してくれる山本に小さく苦笑する。
…そんなに顔に出てたかな……
普段ならどんなに悲しかったり苦しかったりしても顔だけには出さないようにしてたのに。
付き合いが長いからわかったのか、…姫の影響で感情が出やすくなったのか。




「…オレは…姫を好きにならないと思ってた」

「……」

「でも、いつの間にか惹かれてて―――愛してるんだ」



けど、



「姫に好きな人がいる」

「…誰か知ってるのか?」




恐る恐る聞いた山本に小さく笑ってみせる。

首を軽く振りながら。




「いや。でも…オレじゃないことは確かだ」

「…それは、」

「わかってる。オレ達は所詮政略結婚。…幸せな結婚はできない。
けど…姫には幸せになってほしいんだ」

「ツナ…」

「だから、さ…」




姫を手離すよ。



オレの言葉に何故か山本が泣きそうな顔をしていた。
相変わらず優しい奴だな、と笑いながらも…心の奥が死んでいくような気がしたけどそれは知らないフリ。


「(それで、ツナは幸せになれるのか?)」


誰かの幸せは誰かの犠牲の上で成り立っている。
そう言ったのはどこの誰だったか。

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