60
リボーンと別れて、作りかけのケーキを作っていく。
自分の過去に決着がついたからか心はとても穏やかだ。
早く綱吉にケーキを持って行きたい、と逸る気持ちを抑えているとトントン、と再びノック音。
綱吉かな、と思って返事をすると勝手に開いたドアから入ってきたのはまさかの恭弥。
ずんずん、と歩く姿は…な、何だか怒ってる?
ゴツンッ!!
「痛っー!…い、いきなりどうしたんですかっ…!」
「自業自得」
ふん、と鼻を鳴らす不機嫌な恭弥に私はただ目を白黒するしかない。
痛む頭を押さえつつ、お茶の用意だけすると恭弥はいつものように僕の部屋如く寛ぎ始めた。
相変わらずマイペースな人だなぁ、なんて思っていると、
「君も座りな」
「…はい」
恭弥の前の椅子に座ると恭弥はカップを置き、真っ直ぐ私を見つめた。
何処までも感情の読めない…真っ黒な瞳を。
「赤ん坊に心戻ったわけ?」
「…え?」
「さっき、抱き合ってたでしょ」
「…!!」
恭弥の言いたいことがようやくわかって慌てて「違います!」と珍しく大きな声を出した。
確かにリボーンに抱き締められたがあれはそういう意味じゃない。
ましてや、心が戻っただなんて。
勘違いされては困るとばかりに否定するが恭弥はあくまでも冷静で。
「何があったわけ?」
「…リボーンにちゃんと伝えたんです。自分の気持ちを…そして、感謝を」
「…なるほどね。赤ん坊はなんて?」
「最後に頷いてくれただけで、何も…でも、受け止めてくれたと思います」
少し悲しそうな…それでもとても優しい目をしていたから。
リボーンのことを思い出していると恭弥は少しだけ長く息を吐いて、紅茶に再び口をつけた。
「(全く…勘違いが多すぎる)」
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