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「………っ、」




パタン、と閉まったドアが最後を告げる。

ごめん…ごめん、姫。
でもこれでようやく君は幸せになれる。
リボーンと、何の壁もなく接することができるんだよ。

君が幸せなら、それで……

ぽたり、と落ちた雫石に自分が泣いていることに初めて気がついた。

泣いたのなんて何年ぶりだろう……
…そうだ、あの時、以来。

あの時から俺はマフィアのボスとして泣くことができなくなった。
そしてもう、泣くこともないと思っていたのに……

声を押し殺して泣いているとふと目に入ったカート。
あれはよく姫がお菓子とか持ち運ぶときに使う……
もしかして、と思い、そのカートを見てみると、




「…作ってくれてたんだ」




甘い、シフォンケーキ。

俺がケーキ作ってって言ったから急いで作ってくれたんだろう。
俺は微かに震える手でフォークを持ち、一口だけケーキを食べた。




「…っ、うまい…」




ほんのり甘いシフォンケーキは切なくなるくらい、美味しかった。

姫の優しさが伝わってくるみたいで、また涙が込み上がってくる。



ーーーごめん、大好きだよ。

大好きだ…っ、姫…

…だから、幸せになって。


(俺のことは、忘れていいから)

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