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雲雀さんに殴られた頬がヒリヒリしたが、それでも俺はオルマーノの屋敷に向かう。
もう、会ってくれないかもしれない。
…それでも、俺は君に伝えたいことがあるから。
車でオルマーノの屋敷まで行くと幹部のやつがかなり慌ててボスを呼びに行った。
それを見送りつつ、中に入ると戸惑いながら俺を止めるオルマーノの部下達。
そいつらを無言で無視して超直感を頼りに姫の部屋を目指していると、どうやら騒ぎを見に来たようで、姫が一室から姿を現す。
姫は騒ぎの中心が俺だとわかると目を丸くさせて俺を見つめた。
会いたかった…君に、ずっと。
自分が手放したくせに、身勝手だと、わかっていても。
「姫、」
「みんな、下がってください」
「姫様、ですが、」
「大丈夫です。…下がって」
「……御意」
渋々と頭を下げ、皆が皆姫に危害を加えたら許さないとばかりに睨んでくる。
これが、オルマーノ後継者、姫の統率力。
初めてみた姫のボスとしての威厳に場違いながら見惚れてしまいそうだった。
誰もいなくなった廊下に、ただ俺と姫の二人だけ。
真っ直ぐ見つめる姫に俺も真っ正面から言葉をぶつける。
「君を迎えに来た、姫」
「………何故ですか?あなたと私は互いの利害の一致により離婚したはずです」
「俺には姫が必要だから」
「…っ、勝手なこと言わないでください!オルマーノの力がほしいなら私は、」
「違う!!」
本当は、君を…姫を愛してるんだ…っ
「…え…?」
俺の言葉に姫の目が驚きで大きく見開かれる。
信じられない、とばかりに首を小さく振った姫に俺は一歩近づいた。
「…最初は俺も君を愛せないと思ってた」
「……っ」
「でも…側にいるうちに、自分でも信じられないくらい…姫に惹かれてた」
一歩、また一歩、近づく距離。
姫の目には涙が浮かんでいたが、それでも真っ直ぐ俺を見てくれた。
「…姫がリボーンが好きなことは知ってる。
でも、この気持ちを偽っていくことができない」
だから、戻ってきてほしい。
そう言い切ると姫は軽く俺の胸の中に飛び込んだ。
その体は小さく震えていて、たまらずその体を抱き締める。
(…やっと、戻ってきた)
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