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次の部屋は雨の守護者、山本武様のお部屋。
いつもは野球のためアメリカにいることが多いらしいのだが、結婚式があったためちょうどいらっしゃるらしい。
こんこん、とノックすると中から元気のよさそうな声が聞こえてくる。



「誰だー?」

「姫です。あの、」



姫、と名前を言っただけじゃわからないだろう、と思い、何か説明する言葉を繋げようとしたが、中からがたごと、と何故か物がぶつかる音がしたので思わず言葉をきる。

一体何が…事故とか起こってないかしら…?

ドアを開けて入っていこうか迷っているうちに内側から勢いよく開いたのでびっくりしながら現れた人物を見上げた。

黒髪短髪の長身の男性。
黒スーツのネクタイを軽く緩めて、如何にも堅苦しいのが苦手そうな人だった。
お互い驚きで目を丸くしていて、何も言葉を発せずにいると、先に口を開いたのは彼の方だった。



「…びっくりしたぜー!まさか俺の部屋に来るとは思ってなかったからよ!
どうしたんだ?ツナの部屋探してんのか?」

「い、いえ、山本様にご挨拶をと思いまして」

「え!?…ははっ!そんな堅苦しいもんいらねぇって!」



一瞬だけ本当にびっくりしたように目を丸くした山本様だったが、すぐに何故か楽しそうに笑ったのでよくわからず首を傾げながらも何も言及はしなかった。
それよりも自分を受け入れてくれるような笑顔を浮かべられて少し心がほっこりする。
何だかその一つの笑顔だけで安心する、というかその人柄がよくわかる。



「それに様なんてつけるなよ!友達(ダチ)の奥さんなんだしな!」

「(友達の奥さん、か…)…はい、山本さん」

「さんもいらない!」

「えっ!?で、では…何とお呼びすれば…」



屈託なくそう言われてしまってはこちらも困ってしまう。
呼び捨てだなんて仲のよかった友達くらいしかしたことがない。
ましてや初対面で、一応夫の部下に当たる人を呼び捨てになんてできない。



「山本か、武だな!」

「(やっぱり呼び捨ての究極の選択!)では、武、と呼ばせて頂きますね」



まぁ本当は敬語もいらねぇんだけど、それはおいおいな!

そう嬉しそうに言ってくださった山本様…いえ、武に小さく微笑み返したのだった。

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