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それから武とは話が中々尽きることがなくて、楽しいから思わず長話をしていると冷たい微量の殺気を感じて思わず素早く目を走らせる。
さすが守護者である武もこの殺気に気づいたのか軽く笑いながらも同じ方向に視線を向けていた。



「僕の前で群れないでくれる?」

「よぉ、雲雀!」



黒いスーツ、黒い髪、黒くて鋭い瞳、それら全てで作られていると言っても過言でない人…雲の守護者、雲雀恭弥がそこに不機嫌極まりない顔をしてそこに立っていた。
気さくに声をかける武を冷たい視線で一瞥して、その横をすぐに通りすぎようとしたので思わず「雲雀様!」と声をかけていた。
このまま通りすぎるのを見送ってもよかったのだが、挨拶できるときにした方がよいと判断したためだ。

何せ雲の守護者である雲雀様は非常に掴みがたい存在であり、常に忙しく各国を飛び回っているという。
そんな方に次いつ会えるかわかわらない。
ならば今ご挨拶しておくのがベストだろう。

そう判断したのが吉と出たのか凶と出たのかわからないが、雲雀様は少し鬱陶しそうにしながらこちらに目だけ向けてくれた。



「お初にお目にかかります、姫と申します。
今後、よろしくお願いいたします」

「君とよろしくするつもりはないよ。
それとも何?新婚早々浮気のお誘いかい?」

「雲雀!!」



言い過ぎだ、と怒りそうな武をすぐに制して雲雀様をまっすぐ見つめ返す。
挑発的な瞳が静かに私の言葉を待っているのが見えて、自分の中のプライドが揺さぶられるのを感じた。



「私の体は既にボンゴレのために捧げられています。
…そのような言葉に、惑わされたりはしません」



例え、心を捧げることはできなくとも。



「…ふぅん」



雲雀様は片時も視線を外さなかった私にそう呟くと、同時に私にしかわからないように一瞬だけ口の弧を描くと、何故かひょい、と体が浮き上がる。

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