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いつもより多い書類にうんざりする昼下がり。
そろそろ姫のところに行って一緒にお茶でもしようかと思っているとコンコン、とノック音。

一瞬、仕事の書類追加かと思い、無視しようと思ったが愛しい気配に気づいて俺は急いで立ち上がった。




「姫、」

「あ、綱吉…っ、今、あの、お時間大丈夫ですか?」

「ちょうど姫とお茶しようと思ってたとこ」

「なら、お茶淹れますね…!」

「…?うん、お願い」




はい!と何故かがちがちに緊張している姫を不思議に思いながらソファーに身を沈める。
姫はもう使い慣れたように俺のキッチンでお茶を淹れるとこちらに持ってきてくれた。

そういえば今俺の執務室お菓子とか何も置いてないんだっけ。
姫がいつも作ってくれるから、買い忘れてた。
今度最近できたって聞いたケーキ屋に行ってケーキとか買って来よう。

なんて一人で納得しながら姫が淹れてくれた紅茶に口をつける。

姫は何故か少しそわそわしながら同じようにカップを持ち上げた。




「(どうしようどうしようどうしよう…!!)」

「…ん、おいしい」

「あ、ありがとうございます!」

「…?姫、何かあった?」

「え!?」

「(あ、顔真っ赤)何か今日そわそわしてるっていうか…」

「あ、あああのっ!いえ、そうじゃなくて、いや、そうなんですけど、あの!」




何でそんな挙動不審なんだよ!?
え、俺何かした!?

なんて内心かなり慌てる俺に対して姫は意を決したように立ち上がった。



「綱吉!」

「は、はい!」

「好きですっ!!」

「はい!………え?」




いやいや、はい!じゃねぇよ俺。

すき?隙、透き、鋤、銛…………好き?

え、好き?姫が俺のことを、好き?

え、ええええええ!?




「………もう、一回…言って…」

「……好き、です…」

「もう、一回」

「好きです…綱吉が、大好きです」

「…っ!」




気づいた時には姫の体を強く抱き締めていた。

本当に?本当に俺のことを好き?


そんな情けない言葉が出そうになったけど、姫の言葉が真っ直ぐだったから。
だから、本当だって、感じることができた。


ーーー大好きだよ。

誰よりも、君を……

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