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いや、浮き上がったんじゃない。抱えられてるんだ、しかも俵みたいに。
びっくりしすぎて声もあげる暇もなくただの無抵抗でいると、
「この子、借りてくよ」
の、一言。
はぁ!?と抗議の声をあげる暇もやはりなく、歩き出されて私はもう黙るしかない。
武が少し慌てたような顔をしたが、すぐに困ったように苦笑して「悪りぃ、がんばれよ」と口パクで伝えられた。
なるほど、雲雀様がこうなったら誰もとめられないのね……
悟ってしまったら大人しくするに限るのでそのまま大人しくしていると、何故か雲雀様から楽しそうな笑い声があがる。
「騒がないね」
「騒いだら下ろしてくださるのですか?」
「いや」
「…なら、騒ぐ必要はないでしょう」
「ふっ…やっぱり面白いね。そういう聡い女、嫌いじゃないよ」
「ありがとうございます」
褒められた気はしないけれど、まぁ嫌われてないならいいだろう。
と、いうか私は一体どこに向かってるの…?
まだいまいちお部屋の把握ができていないからどこに向かっているのかわからない。
どんどん地下へもぐっている感覚があるのでこのボンゴレの屋敷から出ることはないだろうけれど……
屋敷から許可なく出ることは許されていないので一応そのことは伝えておくべきだろう。
「雲雀様」
「恭弥」
「は…?」
「だから、恭弥だよ」
二度も言わせないで、咬み殺すよ、と脅してくる雲雀様にまさか、と思う。
これはまさか「恭弥」と呼べ、ということ…?
あの、人嫌いで有名な雲雀恭弥を下の名前で?
…どうやら、嫌われずにどちらかというと気に入られたみたい。
嬉しいけど、何だろうこの複雑な気持ち…。
「恭弥、様」
「様は余計だよ」
「(この人も名前で呼べと!?)…恭弥」
うん、と満足そうな声が聞こえたからきっとこれでいいのだろう。
…それにしたって、ボンゴレの守護者様たちは何てフレンドリーなんだろう。
私が想像していたより、はるかに。
もっと私のことを疎んだりするのかと思っていたけど…
敵対してなかったファミリーだから、なのかな。
不思議な人達、と私は小さく心の中で呟いたのだった。
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