78
「…で、何があった?」
優しく聞いてくれる笹川様はまるで兄のよう。
私は一人っ子だから、もし兄がいたらこんな感じなのかな、と心がほっこりした。
笹川様にもお茶を出すと(恭弥は出さなくていいと眉をひそめたが)私は何から話せばいいのか、と迷う。
でも笹川様のどんなに下手な説明でも笑ってくれそうな雰囲気に自然と肩の力が抜けた。
「…で、どうした?」
「あの…こんなこと、聞くべきでないことはわかっているんですが……
綱吉は、以前心に決めたお方がいらっしゃったんですか?」
「……うむ、まぁ…そう、だな…それは、「いたよ」雲雀!!」
「うるさい。本当のことでしょ」
「そ、そうだが、もっとこう…!」
「下手に隠さない方がいいよ。…で、何で君がそのことを知ってるんだい?」
「…それは、」
以前、ロシアンルーレットをしたとき恭弥と倒れた綱吉をお部屋に連れていき、その時に写真を見たこと。
お花屋さんにお花を作ってもらったときに何故か切なそうな顔をしたこと。
それらを全て説明すると笹川様も恭弥も少しだけ黙り込んだ。
「…確かに、あの頃の沢田はその女子を極限に大切にしていた。
だが、過去は過去。今はその女子と何もない。…沢田も、未練はないと思うがな」
「……写真を未だに持ってるなんて女々しいことこの上ないね」
「恭弥…」
呆れたようにそう呟いた恭弥に小さく苦笑する。
今でも持っているということは綱吉にとって本当に大切な方だったのだろう。
ーーー過去は過去。
そう割りきらないといけないのかもしれない。
私だって最初はリボーンを忘れられなかったし……
「だが、心配いらん!今は極限姫のことを大切にしている!だから、自信をもて!」
「は…はい!」
「うむ!」
にかっと笑う笹川様は本当にまるで太陽のよう。
勢いに圧されてしまったけど、さっきよりは心が軽くなった気がした。
ありがとうございます!とお礼を言えばわしゃわしゃとぐしゃぐしゃにされる頭。
極限!と叫んで恭弥に怒られる笹川様を見ながら軽くなった心と共に小さく笑ったのだった。
- 78 -
*前次#
ページ:
top
ALICE+