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クロームと別れて姫は溜まった仕事をさばき始める。
パーティーまでに終わらせないといけないお仕事が山のようにあるのだ。
コツコツと終わらせているとノック音が聞こえたので顔をあげる。
はい、と内側から声をかけるとゆっくり扉が開き、




「…!リボーン!」

「Ciao、姫。今いいか?」

「うん、もちろん。ちょうどお茶を淹れようと思ってたとこ」

「お、ナイスタイミングだったな」




その言葉にふふ、と笑みを溢してお湯を沸かし始める。
差し入れだったのかリボーンがケーキを持ってきてくれていたので、そのケーキをお皿に乗せた。
そうしているとお湯が沸いたのでお茶を淹れて、リボーンにはエスプレッソを作る。

香りのよいものができて、少し満足げに笑うとリボーンの前においた。




「サンキュー。…仕事はどうだ?」

「うーん…今のところ大丈夫だよ。リボーンは?」

「相変わらずだ」




やれやれと肩をすくめるリボーンに小さく笑い返す。
この世界一のヒットマンは相変わらず忙しいのだろう。




「姫が今度のパーティーのツナのパートナーって本当か?」

「うん、そうだよ」

「そうか…、…気を付けろよ」

「え……」

「いや、身の危険とかの話じゃなくて、」




―――ピリリリリ!


どういうことか聞く前にリボーンの携帯が鳴る。
悪りぃ、と断ってリボーンはその電話に出た。
どうやら仕事の呼び出しのようで二、三言相手と言葉を交わすと電話をきった。




「とにかく気を付けるんだぞ。じゃあな」

「…?うん」




私の頭を軽く撫でて、リボーンはそのまま部屋を出て行った。
気を付けろ、というどこか不安になりそうな言葉だけを残して。

気を付けろ…ってどういうことだろう?
確かに任務なのだから、危険なんだろうけど……
でも、身の危険じゃないって言ってたし、…一体何に気を付けないといけないのか。

うーん、と小さく首を傾げていると再びしっかりしたノック音。
そして返事をする前にがちゃりとドアがあき、きらきらした笑顔が覗きこんだ。




「よっ!」

「武!どうされました?」

「小僧きてねぇ?さっきここに行くっつってたんだけど」

「小僧…もしかしてリボーンのことでしょうか?」

「おう!…あ、そうか!姫はリボーンの赤ん坊時代知らないんだっけ?」

「いえ、知ってはいるのですが…」




恐らく武が言っているのはリボーンが日本に行っているときの話だろう。
それ以前のことは知らないはずだから、曖昧に笑って誤魔化す。




「…それより、リボーンに何かご用事がありました?」

「実は手合わせ頼んでたんだが…この様子だとすっぽかされたか?」

「あら…先ほど仕事があるからとどこかに行かれました」

「ははっ!相変わらずだな!じゃあ今度にするかー」




悪い、邪魔したな!と爽やかな笑みを浮かべて出て行った武を見送り、少し寂しいティータイムを再開する。
武と話したからか、姫の中にリボーンの気を付けろ、という言葉は端の方に置いていかれてしまったのだった。

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