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久しぶりに会ったティナレスに、何て話をしたらいいかわからない。
あの頃の俺は、ただ若すぎて、…選択肢を間違えてばかりだった。
今思い返すと苦い感情と…懐かしい感情が心を満たしていく。
確かに、あの頃はティナレスを愛していた。…けど、その愛しさが今沸き起こらないのはきっと、俺には今、姫という存在がいるからなんだろう。



「綱吉、…なんだか、前よりかっこよくなったね」

「それって前はかっこよくなかったってこと?」

「ふふ、ばかね。前もかっこよかったけど、さらにって意味よ」

「ティナレスももっと綺麗になったよ」

「ありがと」



前の俺なら、こんなに穏やかに話せなかっただろう。
…本当、姫の存在って大きいなって改めて実感させられるよ。

にっこり笑ったティナレスは、ふいに目を伏せる。
その影は少しだけ、切なさを含んでいるのがわかる。



「…ねえ、綱吉。……その…今の奥さまのことは、…好き?」



ティナレスの言葉に、俺は姫の顔を思い出して思わず緩やかに微笑んだ。



「うん、好きだよ。大切にしたいと思ってる」

「それは、本物の愛なの?政略ではなく?」

「…確かに、最初は政略結婚だった。彼女を愛せないとも思ってた。
…でも、…彼女の、姫の包み込むような温かさに段々惹かれて…いつの間にか、愛してたんだ」

「………そ、う…」



その時の俺は姫の色々な表情を思い浮かべて、…優しい顔をしていたと思う。
だから、気づかなかったんだ。

ティナレスの、表情に。



「綱吉」

「あ、雲雀さん。姫は?」

「僕のお酒に付き合ってたら酔ってしまったみたいでね。帰ることにするよ」

「…そう、ですか…今姫はどこに?」

「僕の車に寝かせてるよ。草壁に送らせるから」

「俺も一緒に帰ります。姫が心配ですし、」

「必要ない。じゃあね」



雲雀さん!と呼び止めるが、あのわがままが足を止めてくれるはずもなく。
さっさとパーティー会場から出ていってしまい、追いかけることはできなかった。

雲雀さんが姫に変なことをしないことはわかっているが…それにしたって、面白くない。
…姫がいないのでは、任務もできないことは確定している。
二つの意味でため息をつくと、少し出てきた黒い感情に無理矢理蓋をした。



「…奥さま、帰られたの?」

「……そうみたい。仕方ないね」

「なら……もう少しだけ、一緒に、飲まない?……二人で」

「……ごめん、今日は帰るよ」

「そう…残念ね。…気を付けて帰って」

「ありがとう、ティナレス。君もね」



小さな笑みを浮かべて手を振るティナレスに手を上げて応えると背を向ける。
今回、任務を遂行できなかったのは残念だが、姫の方が心配だ。
二日酔いとかにならないように何か差し入れようかな。

そう考えながら歩いていた俺には聞こえなかった。



「…心は簡単に変わるのね。……残念だわ、綱吉…」

さよなら、ね。

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