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「奥さま…!」
「…ティナレス、さん…?」
そこにいたのは、ドレスがボロボロになったティナレスさん。
元々はシルクでできた華やかなドレスだったはずなのに…見る影もなかった。
確かティナレスさんはニューヨークの社長令嬢だと六道さまが言っていた。
つまり、一般人。…この戦いに巻き込まれてしまったのかもしれない。
息を切らせて駆け寄ってきたティナレスさんの体を抱き止める。
その体には所々怪我があって、少しだけ眉に皺が寄った。
「何故あなたがここに…」
「私、呼ばれて…お化粧に行っている間にこの騒ぎが…」
「…そうだったんですね。ここではまだ危険です。今応援を呼んで」
「その必要はありませんわ」
「え?」
――――パンッ!パンッ!
「…っ、ティナレス、さん…!」
「…あなたはここで死ぬのだから」
燃えるようにお腹が熱くなる。…そして、溢れだす、血。
あまりの痛みに立っていられなくて、私はティナレスさんに撃たれたお腹を押さえながら倒れこむ。
…冷たくて、冷たくて、憎しみで染まった目とかち合う。
その瞬間、ティナレスさんがどれだけ綱吉を愛していたのか、痛烈に伝わってきた。
「あなたさえ…あなたさえいなければ…!!」
「…ティナ、レス、さん…」
「私の名前を気安く呼ばないで!!あんたみたいなお嬢様大っ嫌いなのよ!!
…っ私はね、ニューヨークに帰ったらお父様は全財産を失ってた!そこからは地獄!!金を貰うためなら何でもしたわ!麻薬を売ることも、この体を売ることすら躊躇わなかった!
全ては…またあの地位に戻って、綱吉の隣に立つため!!なのに…っ!!
なのに、いつの間にか綱吉の隣にはあんたがいた!!私が死ぬ思いをしている間に苦労も知らないお嬢様が綱吉の妻になってた!こんなの…っ許せるはずない!!」
「………っ、」
泣いていた。
辛くて、苦しくて、許せなくて、憎らしくて、…悲しくて。
ティナレスさんは、哭いていた。
その気持ちが痛くて…私は、何も言い返すことができなかった。
がちゃり、と再び銃口を向けられる。…熱かった傷も、段々感覚がなくなってきていた。
「許せない…!!絶対に…!!だから、もう、あんたなんか……死んで!!!」
――本当は、こんなところで死にたくない。
もっと、ボンゴレファミリーの人たちと仲良くなりたかった。お父様に親孝行したかった。
…もっと、綱吉と話して、デートして、…笑い合いたかった。
したいことが、たくさんあるのに…こんなところで、死にたくないのに、…体はもう、動かない。
ごめんね、綱吉……私が死んだら…あなたは泣いてくれるかな…?
優しいあなただから、きっと、泣いてくれるよね……
でも、そんなに悲しまないでほしいな。…私は、あなたの暖かな笑顔が大好きだから……
ねぇ、綱吉。
最期にあなたに会えないことが、少しだけ心残りです。
死ぬなら、私は…あなたの腕の中がよかった。
あなたの笑顔を見ながら死にたかった…でも、それも叶いそうにない。
…愛してます、綱吉……あなただけを、ずっと……
これも、本当は、ちゃんと、言いたかった、な……
そしたらきっと、あなたは……
―――パンッ!!!
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