それを人は苦労人と呼ぶ。
「すごいー!!ローあれ乗ろうよ、あれ!」
「オレはいい、行ってこい」
「えー!ローも行くよ!」
ほら!と手を引っ張られてローも渋々と歩き出す。
だが、その表情も特に嫌そうではなく、どちらかというと嬉しそうだった。
ジェットコースターにメリーゴーランド、コーヒーカップ。
さすがにメリーゴーランドはローも乗らず、ただ楽しそうにしている姫やベポを見守っているだけだったが。
絶叫系にハマッたのか、姫はそういうのばかり乗りたがる。
幸いというか何というかローも嫌いではなかったようで一緒に乗ることが多かった。
「楽しかったー!!あ、アイスあるよ!」
「わぁ、美味しそう!」
「オレはトリプル買うぞっ」
私チョコ!オレイチゴー!などそれぞれ好きなものを買っていく。
ペンギンとローはいらないの?と姫が聞くと二人してアイスコーヒーとのこと。
そんな二人に姫は笑ってアイスコーヒーを2つ買ってくる。
はしゃいで熱くなった体を冷やしながらしばしの休憩をとっているとローが何かを見つけ、にやり、と何か企むような笑みを浮かべた。
そのことに気づいた姫は何もいい予感がせず、見なかったことにしようとしたが、その前に姫、と名前を呼ばれて仕方なくローを再び見上げる。
「次はあれに行くぞ」
「あれって……げっ、まさか!」
「あ、お化け屋敷だね!」
楽しそう!とニコニコ笑うベポに、顔をひきつらせる姫。
…実はそのお隣でシャチも顔を青くしていたのだが。
「い、いや…私はちょっと疲れたし…うん!もうちょっと休憩したいからその間にみんな行ってきても、」
「お前を一人置いていくのも忍びないからな。待っててやるよ」
「(何時もなら構わず置いてくくせに…っ!)」
「ほら、早くアイス食い終わって行くぞ」
にやにやにや。
そんな効果音がぴったりな笑み。
……あーもう!これは絶対行くまで何かしらいい続けるつもりだ!
そう頭を抱えたくなったが、長年の付き合い上、仕方ないと自分が諦めるしかないことを知っていた。
できるだけゆっくり食べて、心の準備をするといよいよお化け屋敷へ。
「お、おおおう、姫、な、何震えてんだよ、まさか怖いのか!?」
「なななな何言ってんのよシャチ!そそそそんなわけないでしょ!こんなの子ども騙しで、」
「ぐぁあああ」
「「ぎゃああああ!」」
血みどろのゾンビが出た途端、二人して大絶叫。
バラバラ死体は慣れているくせに何故かお化けを怖がる二人。
わぁリアルだねー
まぁまぁだな
だなんてベポとペンギンは呑気に話しているのに、だ。
「無理無理無理!ぎゃー!もう、怖いってばばかー!ロー!」
「あ?なんだ」
「手っ、う、ううん、腕!腕貸してっ」
「…ったく、仕方ねぇな」
「「(キャプテン、にやにやしすぎ)」」
ぎゅうっとローの腕に抱きつく姫と、それをいやらしい笑みで見るロー。
あぁ、これが目的だったのか、と今さらペンギンとベポは悟った。
姫は昔からお化けだの目に見えないものが苦手でよく怖い話などをしていると泣いて嫌がったものだ。
そして怖い時に無意識に頼るのがローだった。…最近は姫も大人になり、そういうことが減っていたから忘れていたが。
策略か、と姫のことになると子どもっぽい船長にペンギンは呆れたようなため息をついた。
姫を見て妙案だと思ったのかシャチも「ペンギンー!!」とペンギンに抱きついたが「気持ち悪い」と一蹴。
じゃあどうすりゃいいんだよー!と泣き叫ぶシャチに、ローの腕にぎゅうぎゅう抱きつく姫、それを満足そうに見ながらにやつくロー。
この状況を何とかしてくれ、とペンギンは再び小さくため息をついたのだった。
それを人は苦労人と呼ぶ。
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