ただいま、恋愛中毒中
「……姫、お前…キャプテンと喧嘩しただろ」
「…ペンギン…」
キャプテンの機嫌最悪だ。
そうペンギンは言いながら船の先端で蹲っている姫の隣に座り込んだ。
ローの話題となると姫は体育座りをして顔を膝の間に埋めて表情が見えないようにする。
そんな姫にベポも二人が元気ないって心配してたぞ、と言えば少しの沈黙の後にごめん、と謝られた。
正直、ペンギンは姫がこんなに落ち込んでいるのを見たことがなかったので戸惑いを隠せなかった。
「…キャプテンと何かあったのか?」
「……ねぇ、ペンギン」
「なんだ?」
「ペンギンは…誰かと…体の関係を持ちたいと思ったことある?」
「……っ、…唐突だな」
思いっきり動揺した。
まさかあの色気より食い気の姫からそんな質問をされるなんて、と。
それにいくら1年も前だと言っても…いや、この際はっきり言うがまだ諦めきれていない姫は自分の好きな女の子。
…動揺しない方がおかしい。
…と、同時に何となく理解できた。姫とローが仲悪くなった理由が。
わかった途端にこれは喧嘩より厄介だ、と溜め息をつきたくなった。
「私…わからないの。“愛してるから”体を重ねるの?なら、体を重ねたくないのは“愛してない”の?」
「…それが必ずしも必要十分であるとは限らない」
「私…馬鹿だからわからないよ…」
「お前は馬鹿じゃない。少なくとも、馬鹿ならそんなことも考えない。
……キャプテンが、もっと精神的に大人だったらな…」
そんなペンギンの呟きに姫は微かに微笑んだ。
…ローは充分大人で、私がただ子供すぎるだけなんだよ、と。
そう哀しそうに微笑んだ姫の頭を、ペンギンはただ撫でてやることしかできなかった。
ただいま、恋愛中毒中
(所詮オレは“お友達”だ)
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