狂いたくなるほどきみが愛しい



何が起こったのか、わからなかった。

はっきりと聞いた銃声。姫の声。…赤い、もの。
どさり、と姫の体が力なく甲板に崩れ、その時やっとローの意識がはっきりとした。

姫が倒れた。血を…流して、…オレを、庇って…!




「姫ッ!」

「…っ、水、鉄砲…!」




ざばり、と海の水が無数の鋭い針のようになり、銃弾がきた方向に全ての水を向ければ聞こえてくる断末魔。
…どうやら、賞金首がローを狙撃したらしい。

姫は最後の力を振り絞り、賞金首を殺すとごほり、と血を吐き出して気を失った。…と同時に聞こえてくるキャプテン!というクルー達の声。
それでもローは姫に駆け寄り、姫、姫、と何度も姫の名を呼んで自分の手が赤く染まるにも拘らず姫をかき抱く。




「姫っ姫!姫、目を開けろっ!!」

「キャプテン何が…っ姫!?」

「死ぬなんて許さねぇ…オレを庇って…っ死ぬなんて許さねぇ!!だから目を開けろ!」




姫を強く抱き締めながら姫の名を繰り返すローにペンギンが早足で近づき、



―――バキィィッ!


ローの頬を思いっきり殴り飛ばした。

そんなペンギンにキャスケットがペンギン!と慌てて止めたがペンギンはそれ以上殴ることなく無言でローの胸ぐらを掴みあげた。




「…あんたは、医者だろ?この船の船長兼船医なんだろ?
なら、ただ嘆いてないで姫を治療しろっ!姫を死なせる気か!?」

「……っ!」




ペンギンの言葉にローはようやく気を取り直すことができた。

そうだ…自分は医者だ。…姫を助けることのできる、唯一の人間。
命より大切な人間が自分を庇って撃たれたことに動揺しすぎて忘れてさえもいた。

―――姫を助けたい。
大切なオレのクルーとして…それ以上に、大切なオレの女として。

目が覚めたように、ローの目に光が灯ると、不敵な笑みを浮かべた。




「オレに命令するな。
…手術する。お前ら今から一切部屋に入ってくるんじゃねぇぞ」

『…!アイアイキャプテン!』



姫を素早く止血しながら抱き上げると治療室に入り、ベッドに寝かせて姫に麻酔をかける。

……お前は絶対、オレが助ける。
オレの側を、オレの許可なく離れるなんて…許さねぇぞ、姫。



狂いたくなるほどきみが愛しい
(だから、きみを助けたい)

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