あなたの鼓動も速い
「姫ー!!よかったよぉぉ!本当によかったぁぁ!うわーん!」
「ベポお前泣きすぎなんだよ!姫が死ぬはずっ……うわぁぁぁん!」
「……お前ら泣きすぎだ」
よかったよかった、と泣きじゃくるのはベポとキャスケット。
ペンギンは呆れながらもよかった、と笑っていて、姫はそんなに泣かないでよ、と言いつつももらい泣きしていた。
…ローはガキだな、と笑っていたが。
―――姫が怪我して4日。
ローと仲直り、というより元鞘に戻った二人はニコニコと笑っている。
姫の怪我も順調に治って、どんどん元気になっていた。
二人が仲直りしたことは雰囲気だけですぐわかったのでベポ達は心から安心したようだった。
他のクルー達もよかった、と何度も見舞いにきて、余りにもその見舞いの数が多いものだから怒って、というより嫉妬して面会謝絶したのだった。
「てめぇらうるせぇぞ、病人がいるのに…」
「だ、だってキャプテンだけずるいっす!オレらだって姫が心配で、」
「アイツの心配はオレ一人で充分なんだよ」
『(さらりと惚気たー!)』
惚気は他でやれ!と言いたいところだが、相手はキャプテン。…適わない。ていうか言ったら死ぬ。
というわけでクルーはあえて言葉を飲み込んだがその場にいたペンギンは溜め息をつきながら、
「惚気ないでください」
と言ったのだった。勇者だ。
その言葉にローは鼻で笑うと「羨ましかったらお前も彼女作ってみろ。…まぁ姫以上にいい女はいねぇが」といいのけた。
また惚気!とクルーは心の中だけでつっこんでいた。
どうやら今日のローは姫に腑抜けのようだった。…同じルーキーの赤髪閣下あたりが聞いたら爆笑しそうだ。
「…姫、困ってますけど」
「は…?…なっ」
「あ…あはは……」
照れ隠しに姫は笑ってみるがローの顔が次第に赤く染まっていく。
…どうやら最初から話を聞いていたようだ。
ローはまさか本人が聞いているとは思わなかったようで赤くなった顔を伏せながら早口で「傷に障る。さっさと寝ろ!」と言いながら姫を抱き上げる。
そのお姫様抱っこに姫は「恥ずかしいから降ろせー!」と言っていたが、ローに「うるせぇ」とやはり照れ隠しに黙らせていた。
…でも、抱っこされて一つだけわかったことがあった。
あなたの鼓動も速い
(ローも、ドキドキしてるんだね)
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