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シャチからあの話を聞いてから数日後、全科の医者が院長から呼び出された。
恐らくシャチが言っていた『海外からの外科医』とやらが来たのだろう。
大学の講義室のような場所に来るともうほぼ全員集まっていて、朝からご苦労なことだ、とため息をつきたくなった。
辺りを見渡すと腐れ縁であるペンギンや昨日騒いでいたシャチも近くに座っていてオレもそちらに足を向ける。
無言でペンギンの隣に座ればおはよう、と挨拶されて一応あぁ、と返しておいた。
「…だりぃな」
「大方、院長の自慢だろう。…それよりオレは乳児の心臓手術に成功したっていう女医の方に興味がある」
「何…?」
乳児の心臓手術に成功しただと…?
シャチが言ってた『すげぇ大きな手術』ってのはそれか。
しかも女とは…シャチの奴説明が足りねぇんだよ。
少しだけわいてきた興味に口の端をあげれば「興味深いだろ?」とペンギンもニヒルな笑みを浮かべる。
あぁ、と一言返すと同時に院長がステージに上がったのでみんなから拍手がおき始めた。
嬉しそうに手を振り返す院長を適当に見ていると始まる院長の長話。
理事長は今日欠席らしく、それに調子に乗っているのかいつもよりさらに余計長い話に半分寝ていると「ではご紹介しましょう!」の言葉に意識が浮上する。
「棗姫先生です!」
「「……っ!?」」
その名前に息を飲んだのはペンギンもオレも同時だった。
まさか、と身を乗り出してステージを凝視すれば上がってきた彼女の横顔に思わず「姫、」とアイツの名前を呼んでいた。
自分の記憶より少し大人びた姫は今までの中で一番凛々しくて、思わず目を奪われる。
シャチはオレらが知り合いということは知らないからか呑気に「すげぇ美人ですね!!」と鼻の下を伸ばしていた。
…昔からいい女だと思っていたが…まさか最高の女となって現れるとはな……
あぁ、とシャチに返してやれば珍しくオレがシャチの美人という言葉に同意したからかびっくりしたようにシャチがこっちを向いたのがわかった。
普段、シャチの言う美人は大したことなく、大体がオレに鼻で笑われるからだ。
そんなシャチを置いてオレとペンギンは真っ直ぐステージを見つめる。
「ご紹介に与りました、棗姫です。未熟者ですが、よろしくお願いいたします」
優雅に頭を下げた姫に院長に向けた拍手なんて目じゃないくらいの拍手がわき起こる。
その拍手に応えるように笑顔を作った姫をオレは心臓が痛いくらい高鳴っているのを自覚しながら見つめた。
君を見つけた日
(愛しい君を)
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