元気をくれたのは太陽のような笑顔でした。



昨日はオムライスを食べた後、ローがすぐに家まで送ってくれ、姫は無事帰ることができた。
本当は暗闇が怖く感じたが…隣を歩くローを見ると姫は不思議と安心して帰られた。
夜も今日見せてくれた穏やかな笑顔を思い出すだけで心が温かくなり、姫はゆっくり寝た。…が、問題は朝だった。

いくらローが適切に処置してくれたからと言って一夜で殴られた痣がなくなるはずなく。
鏡を見れば昨日よりは腫れがひいている殴られた跡。これは遠目からでも充分わかるくらいの痣だった。

これを見て、真っ先に心配になったことがナミとローのこと。

ナミは姫から見ると何故かローを嫌っているようなところがある。
…姫は少々心苦しいがナミに真実を言う気は毛頭なかった。

言ってしまえば、ローが傷つくとわかっていたから。…ローが悪いわけでもないのに。

しかし、嘘もつくのも嫌だった。姫にとってナミは親友だから。
きっと痣のことを知れば傷つけたくない人まで傷つける。
そう判断した姫はすぐにいつもは薄く塗るファンデーションを少し濃い目にして痣を誤魔化した。

何度も用心深くチェックしてわからないようにファンデーションを塗って、絶対にバレないと、そう意気込んでいた、のに……




「その痣…どうしたんだ?」




……あっさりエースにバレてしまった。
ちなみにナミやロビンはまだ来ていないのでバレてはいないが…これでは時間の問題だろう。
朝早くにきて今日は待ちに待った体育祭なので最終確認をしていれば次にきたのはエースで。
おはよう!と挨拶するために顔をあげたら…先ほどの質問。

姫は困ったように苦笑して、




「転んで…」

「転んだだけじゃ、んな痣はできねぇ。…まさか、誰かに殴られたのか!?」

「違うよ!本当に転んだの!」

「姫、」

「…ごめんね、エース」




これ以上は追及しないで、と困ったような笑顔のままでいれば、エースは全ての言葉を飲み込んで、悲しげに目を伏せた。
そして姫の頬に手を添え、その痣を一撫でするとポンポン、と姫の頭を撫でる。




「…エース、」

「今日の体育祭、頑張ろうな!」




ニカッと太陽のような眩しくて暖かな笑顔を浮かべたエースに姫は心の中だけで「ありがとう」と呟き、うん!と笑顔で頷く。
そんな姫にエースは再び笑みを深めると、




「二人三脚めざせ一位!」

「おー!」




ノリノリで姫はそう返事して、エースと二人拳を突き上げる。
そんなことをしている間に生徒会と実行委員会の朝のミーティング時間が迫り、姫は慌ててチェック表などを片手に教室から出ようとした。
すると、エースが姫!と呼び止めて、




「頑張れよ!」




と、誰から見ても純粋な笑顔を浮かべてブンブンと大きく手を振ってくれたから姫は笑って大きく手を振り返す。
そしてこの学園で一番大きなグラウンドへと出ていったのだった。みんなが姫の指示を待つ場所へと……

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