ゴールも一番



朝早くにも関わらず役員の子達はみんな集まってくれていて最終チェックを行う。
流れを大体再確認してから、今日もがんばろう!と意気込んだ。


ーーーこうして体育祭はスタートしたのだった。


スタートしてしまえば賑わう運動場。
白組である姫は白組のテントに入るとみんな「姫様!」と目を輝かせた。きゃー!と黄色い声がテントで叫ばれて姫は思わず苦笑してしまったが。
ごきげんよう、と微笑んで挨拶していると「姫」と低い声に呼ばれて振り向けばローの姿が目にはいる。
おはよう!と笑えばローはやや戸惑ったように言葉に詰まらせた。
しかし、次第に緩く微笑むと「…はよ」と返したのだった。




「昨日は…ありがとう」

「…いや。傷の具合はどうだ?隠してるみてぇだが…」

「トラファルガーくんのおかげでもうひいてきてるよ」

「そうか…」

「…そうだ!トラファルガーくん、この後何に出る?」

「この後?…借り物とリレーだな」

「じゃあもうすぐ出番だね!頑張って!」

「あぁ。…姫、」

「ん?」


「オレだけ見てろよ」




にやり、と笑うローに姫の頬がかぁっと熱くなるのがわかった。
そんなことできないよ、なんて笑って誤魔化すこともできない。
それだけ言うとローは集合場所に向かって歩き出したから姫も慌てて自分の席に戻った。

…顔は已然として真っ赤だが。




「ふふ、おはよう姫」

「あ…おはよう、ロビン!」

「姫ー!遅ぇぞ!」

「ふふっ、ごめんエース!」

「ほら応援すんぞ!」




応援団のみんなと徒競走の応援をする。
ルフィが出たときは敵ながら思わず応援してしまっていた。
余りにも負けず嫌いすぎて一緒に走っていたバギーと喧嘩しながら走っていたからなのだが。
そうしているうちについに今年から取り入れた借り物競争が始まる。
借り物の中身は後輩の子達に任せていたからどんな借り物が出てくるか知らない。
どんなお題だろう、とワクワクしていると出てきたお題は…なんとまぁ難解。
かつらを被った人(ウソップがアフロ被って出た)スモーカー先生の葉巻(スモーカーはかなり不機嫌)等々……
これはすごい、と内心姫は苦笑していると次はローの出番。
やはり女の子達の黄色い声が飛び交っていると、一瞬だけ目が合ったような気がした。




「よーい、スタートだよい!」




マルコのスタートの言葉にみんな一斉に走り出す。
一番にお題を手にできたローは即座にその紙を開いた。

ローに出されたお題は……



『さぁ、トラファルガーくん一番に引きました!トラファルガーくんのお題は…

“今最も大切にしているもの”です!』




「…はっ…簡単だな」




小さく余裕の笑みを浮かべたローはすぐに走り出した。
そして自分のテントに戻った途端に女の子達が『もしかして私…!?』と目を輝かす。
しかしローはそんな女の子達を通りすぎて、びっくりしながら自分を見上げる姫に手を差し出した。




「行くぞ」

「えっ…!?って、きゃっ!」

『きゃー!!!』




ローは姫の体を抱き寄せたかと思えばいとも簡単に姫の体を抱き上げた。
…所謂、お姫様だっこ。

そんなローのかっこよさに女の子達が黙っているはずなく、沸き上がる声援。
そんな声援なんて聞こえなくなるくらい、姫の心臓は高鳴っていた。


ーーー大事にしているものが、私…?


もしかして怪我をさせてしまったからだろうか、と想像したがローがそれくらいで大切にするとは思えなかった。


ーーー…どういう意味なの?



そう聞きたかったけど、姫はローの袖をただぎゅっと握りしめるしかできなかった。

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