まだ言えない、
学校案内以来、エースは姫と仲良くなった。…というよりエースが姫を気に入っていた。
勉強でわからないところがあれば姫に聞き、体育の時も一緒にいる。
姫は姫でエースの人柄に親近感を覚え、まるで親友のように思っていた。
いつもなら姫に近づく男は抹殺!なナミとルフィもエースの性格を知っているうえにルフィに至っては大好きな兄だ。
そんなこともせず、時々ロビンも加わりながら他のクラスであるゾロやサンジ、チョッパー、ウソップと一緒に遊んだりもした。
「姫ー!」
「エース!どうしたの?」
「オレにここ教えてくれねぇかっ?」
「うん!いいよ」
難しそうな数学の問題に難しいね、なんて言いながらも姫は少しずつその問題を解いていく。
その解答をエースは見つめて…途中で「あ!」とわかったように声をあげて、姫すげーな!と無邪気に笑いながら解けたことが嬉しかったのか思いっきり姫に抱きついた。
姫はわっ!とびっくりしつつも友に対する抱擁のようにバシバシと背中を叩くから照れることなく苦笑すれば、
―――ガンッ!
「……っ!」
「…るせぇんだよ火拳屋」
先ほどまで一人で医学書を読んでいたローが机を足で蹴り、ギロリ、とエースを睨む。
その睨みにエースは目を鋭くさせた、が、直ぐにエースの腕から温もりが消えていた。
「ごめんなさい、トラファルガーくん。勉強の邪魔をしてしまって…」
「…………」
「静かにするね」
にこり、と少し申し訳なさげに微笑んでエースに後で図書室に行こう、と言った。
そんな姫にローは盛大に舌打ちして不機嫌げに再び乱暴に座るから教室が何とも言えない空気に包まれる。
そんな空気は……
「姫ー!ちょっと手伝ってくれー!」
……空気の読めない先生、シャンクス先生がぶち壊したのだった。
ペンギンはそんなシャンクス先生にはぁ、と溜息をつき、姫は慌てて返事をしてから教室を出ていく。
教室に残ったローはすぐに立ち上がり、無言で教室から立ち去ってしまった。
そんな中、ナミが何かを考え…ゆっくりエースに近づく。
「…ねぇ、エース。あなた…もしかして、」
「…まだ言うな、ナミ」
「…、わかった」
ガロンハットを深く被り直してそう絞りだすように言ったエースにナミは小さく溜息。
厄介なことになりそうね…という呟きを残して。
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