知ってるよ、



「体育祭、今年はちょっとだけ違うんだよ?」

「…クラス別じゃなくてくじで団員を決めるってやつか?」

「うん。他のクラスの人となんて新鮮で…トラファルガーくんはキャスケットくんやベポくんと一緒の団になれるといいね」

「……なんで、オレがキャスとベポと…」

「だってトラファルガーくんとペンギンくんが二人に通行許可出してるんだよね?」




あれ、違った?と首を傾げる姫にローは正直驚いていた。

この学園はクラスが厳格に分かれているため自分の所属しているクラスより高いクラスに行く場合先生、またはその上のクラスに所属している人間が許可証を出さないと下のクラスにいる生徒は入れないようになっている。
姫が言う通り、ローとペンギンはキャスケットとベポに友人としての通行許可を出していた。
姫は生徒会長で、しかもルチアとして成績維持もしないといけない。…クラスの、しかもローのようなあまり関わりのないクラスメイトの人間関係など知らないとローは思っていた。

姫が知っていた、という事実にローは自然と口の端をあげながら、いや、違わねぇ、と否定する。




「よかった…あっ、ここでいいよ」

「……あぁ、ここか」




だだっ広い家の前につくと姫はチャイムを鳴らしてただいま、と言えばすぐに家の門が開く。
さすがお嬢様、というべきなのだろうか。いくら学園ではクラスの組分けには親の影響力はないといってもやはり上のクラスに行けば行くほど自然とそういう人間が多くなる。

…当然ながらローも一応は世間的に言うお坊ちゃんなのだが本人はそういう柄でもないので好き勝手しているだけだった。
ソーレはほとんど自分の親を糧にするような人間はいないのだから。

門が開くと姫はローを振り返り、いつものようにふわり、と微笑みかけた。




「今日は送ってくれてありがとう。今度は一緒にお茶しようね!」

「………」

「それじゃあ…また明日」

「……っ」




小さく手を振って中に入ろうと背を向ければ、ガシリとローは咄嗟に姫の腕を掴んでいた。
そのことに姫は驚いてすぐに振り向いたが…帽子でローの表情は見えない。

トラファルガーくん…?と恐る恐る名前を呼ぶと、ローは何秒か黙った後「悪りぃ…なんでもねぇ」と言ってゆっくり姫の腕を離した。
そのことを不思議に思いながらもローは何もなかったように背を向けて帰っていったので姫は何も言えずに家の中に入っていったのだった。

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