最低男仕掛ける(もちろん振られる)



その朝――私はきゅっと帯を締めると布団をたたんで部屋を出る。
帰る旨を伝えるとぬらりひょんさまは「慌てるこたぁない。朝飯だけでも食ってから帰んな」と言われて言葉に甘えることにする。
代わりに朝食づくりをお手伝いしているとあくびをしながらリクオさまが入ってくる。
パチリ、と目が合ったがすぐさま目をそらし、ご飯を茶碗によせた。



「若ーおはようございますー!…って、なんだかほっぺが赤くはれていますよ?
…はっ!!もしやどこかのシマの妖怪と喧嘩でもなさいましたか!?」

「ん?…いーや。…ちょっとばかし猫にひっかかれちまってな」



さらり、と私に流し目を送りながらそうのたまうリクオさま。

…何が猫にひっかかれたよ…っ!私に叩かれたっていえばいいのに…!!
その原因は女をたらしこんでいるからですってっ…!!

怒りたいのをぐっと我慢してしゃもじをぎりぎりと握りしめる。



「お、姫、朝食の用意も手伝ってくれたのか?」

「ぬらりひょんさま。はい。微力ながらお手伝いさせていただきました」

「よぉ、姫。俺には挨拶なしかい?」

「………おはようございます、リクオさま」



しぶしぶ挨拶をするとにやりと笑って私の顎を持ち上げると「今日も綺麗だぜ?」と囁く。
その手を即座にはずし、持っていたお茶碗をリクオさまの手に乗せてにっこり笑ってやる。(もちろん笑顔は怒っている)



「どうぞ、りくおさま。たーくさんお食べください」

「俺は飯よりお前を食べたい」

「死んでくださいませごほんごほん!いえ、お戯れを」



さぁお食べください、とリクオ様に茶碗を押し付けるがリクオ様は茶碗を押し返そうとぎりぎりと静かに争いあう。
今にもお茶碗が割れそうなんて気にしてはいけない。

なんなんだこの男は。朝からセクハラにもほどがある。

そんな私たちの静かなる争いに気づいているのか気づいていないのかぬらりひょんさまは楽しそうに笑っていた。



「お前たち仲いいのぉ〜」

「よくありません」

「あぁ、そう思うだろ?」



どこがだ。



「…ほんと、こんな女いない……オレはあんたを気に入った」

「驚きです。気に入ったと言われてこんなに嬉しくないのは初めてです」

「素直じゃねぇな」

「…っ無礼を承知で申し上げます!私は!あなたのような!女を弄ぶ最低男は嫌いです!!一ミリも好きになれません!!私を落としたかったらそのだらしのない女関係をすべて清算してからにしてください!!」



よし、言った。言ってやった。

全く…この人と話しているとこの人の好感度がどんどん下がっていく。
言いたいことはすべて言い切り、彼からすぐさま離れた。


…と、思ったら、何故か腕を引かれて再び腕の中。



「なぁ、俺と夫婦にならねぇか?」

「絶対嫌です」



この人、私の話、聞いてた?

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