最低男再び仕掛ける(やっぱり振られる)



何故かリクオさまに毎日しつこく言い寄られています。



「姫、俺と夫婦になろう」

「なりません」




「姫、今日も綺麗だな…」

「近いです」




「そのつれねぇ態度も好きだぜ?」

「物好きですね」




「この簪、姫によく似合う」

「私より若菜さんの方が似合うと思いますよ。プレゼントされては?」




あぁああもうなんなんだ一体!ずっと!

ひょこりと顔を突き合わせては何かしら私に口説き文句を囁いていく。
今のところすべてお断りしているが、私だって暇なわけじゃない。
お世話になっている分、料理、洗濯、掃除のお手伝いをしないといけないし、自分のために学問も深めていかなければならない。

とにかく、忙しいのだ。これでも。

それなのに、顔を合わせるたびに抱き寄せられたりするのはたまらない。
というか、遭遇率高すぎる気がする。
リクオ様と出会わない場所は、と考えたところで、ぴたりと思考が停止する。

ここ、奴良組なんだから不可能だ。

はぁ、とため息をついて洗濯物をぴしり、と伸ばして物干しざおにかけた。



「何ため息ついてんだ?」

「…何やら私を口説いてくる方がいらっしゃって困るな、と」

「困ってるなら役得だな」

「何故です?」

「オレを想ってくれる時間が増えるだろ?」



どこからか現れたリクオさまが私の腰を引き寄せて色っぽく囁いてくる。

…オレを想ってくれる時間が増える……
確かに想ってはいないが、リクオ様のことを考える時間が増えている気がする。

と、いうことは、この状況はリクオさまにとって計算内ということか。
それはそれで悔しい。てか、考え方がやっぱり女慣れしている。

引き寄せている手をやんわり外して、にっこり笑いかける。



「確かに、考える時間は増えたようです」

「…!(初めての手ごたえ!)」

「ですが、想ってはいません」



ばっさりと切り捨てる。

しかし、リクオさまは「あぁ、それでいい」と余裕の笑みを崩さない。




「今は、俺のことを考えてくれるだけでいい。…それが、悪口でも」



いつかは、違う想いに変えてやるから。


「…リクオさまは、うらやましいくらいポジティブですね」



嫌味ではなかった。本当に、心からそう思った。
そのポジティブな考えを聞いてるとなんだかこちらが笑顔になる。

不思議な力……

ふわり、と笑いかけるとリクオさまはなぜか私の顔をじっと見つめたまま固まってしまう。
そんなリクオさまに少しだけ首を傾げたが、まぁ放っておいても大丈夫だろう、と結論付けてそのまま洗濯籠をもち、屋敷の中に入っていく。
しかし、突然、腕を引っ張られて、そのまま体はその人の腕の中へ。

もちろん、その犯人はわかっているのだが、



「やべぇ…まじで、好きだ」

「…っ…」



耳元でくすぐった声に、いつものように躱すことなんてできなかった。

――トクリ、と小さく心が熱くなったのは、秘密。

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