最低男引いてみる(反応なし)



「なぁ、どうしたら姫が振り向いてくれる?」

「そりゃあ若、女遊びをやめればいいんですよ」

「んなのすぐにやめた。けど、振り向いてくれねぇんだよなぁ…」



夜遅く、かっぱのいる池の前の縁側に酒を飲みながら黒や青、首無と話し込む。
主に話題は最近うちにいる姫のこと。

はっきり言ってオレは姫に惚れてる。
それこそ、今までの女たちとは比べ物にならないくらい。

でも、オレが女遊びをしているところを姫に見られ、最低だと罵られ、そこから女たらしのレッテルをはられている。
だからいくらオレが姫に綺麗だとか好きだとか言っても姫に本気にとられないのだ。

…初めて、女遊びをして後悔した。

これが遊んでいたオレへの罰なのだと。
親父もじじいも遊んでいたというが、どうやって本気の女を落としたのか……

こくり、と飲んだ酒はいつもより苦く感じた。

ぱしゃぱしゃと水遊びをしていた河童がそれじゃあ、とのんびり言葉を発した。




「引いてみればいいんじゃないですかー」

「…は?」

「ほらーよく言うでしょー『押してダメなら引いてみろ』って」




そりゃあ一理ありやすぜ、と同意する青に妙案かも、と頷く首無。
…引いてみる、か。わざと冷たくするってことだよな。

まぁ、してみる価値はある、か?

考えておく、と言っておきながら明日のことを考えている自分がいた。



―――――………

――……



朝起きて朝食を食べるために大広間へと向かう。
いつものように姫はみんなの分のご飯を茶碗によそっていた。
笑顔で下僕たちに茶碗を渡す姿はやはり可愛らしい。

あぁ可愛いな、と思わず心の中で呟いたが、声に出すことはしない。

いつもなら姫に甘い言葉一つ囁きに行くが、今日は我慢だ。
何もないふりをして自分の席に座ると珍しく姫から茶碗を取りにきてくれた。



「おはようございます、リクオさま」

「あぁ、おはよう(しかも姫から挨拶してくれた!)」

「(…?あれ、今日は何も言わないんだ。珍しい)ご飯、つぎますね」

「あぁ」

「(え、いつもなら姫が盛る飯はうまいだのなんだの言うのに、どうしたの!?)」



怪訝そうな顔をしたままご飯を盛る姫。
恐らくいつもならもっと絡んでくるのに、今日は全く絡まないからだろう。

…もしや、これはいい作戦かもしれない。

いつもあるものがない。それはとても寂しいことだ。
恐らくこのまま続ければ姫はさびしがってくれるはず。

よしよし、このまましばらく続けよう。



朝食を食べ終わった後はとにかく姫を見かけても何も接触しない。

河童と仲良く笑いあっているときは声をかけそうになったがそこはぐっと我慢する。

夕食の時も言葉を交わさずに黙って食べていた、の、だが……



「本当に何もねぇ…!」



ちょっとは姫から話しかけたり、心配されたり、ちょっと意識されたりするかと思ったが、オレが話しかけなければ姫は話しかけないし、目すら合わない。
姫は本当に驚くほどいつも通りだ。

…なんだよこれ、誰だ姫には効果的だとか言ったの…!
全然意味なかったっていうか逆効果じゃねぇか……




「あれ、姫、コラム『今日の若』はないの?」

「あはは、私のただの愚痴に名前つけないでくださいよ」



微かに聞こえてくる毛倡妓と姫の声。しかも話題はオレらしい。
どうやら姫は毎日オレが姫に何をしたか、ということを毛倡妓に愚痴っていたらしい。
…愚痴といわれるのも酷いもんだが。



「今日は驚くほど何もなかったんですよ」

「へぇ、いつもならすごいラブコールを送ってるのにねぇ」

「きっと私に飽きたんじゃないですか?」

「そうなのかしら?」



おいおいおい!ちょっと待て!なんか勝手にしちゃいけねぇ勘違いをしてるぞ!
毛倡妓も「そんなことない」とか否定しろよ!オレの気持ち知ってるだろ!

この作戦はなしだ。明日から今日の分までアタックしてやらぁ…!




「(…飽きたんだろうなぁ…)」


ちくん。


「(…突き放されて自分の気持ちに気づくなんて、私って子ども…)」

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