ハジメマシテ
「今日からここで暮らすことになった、姫じゃ。仲良くしてくれ」
「よろしくお願いします」
『…はぁあああ!?』
じいちゃんが、女の子を連れて帰ってきた。
黒髪がすごく長くて、黒がすごく似合う…どこか寂しそうに笑う女の子。
最初はその子の美しさに見とれていたが、じいちゃんの言葉に思わず正気に戻る。
誘拐してきたんじゃないでしょうね!!
まさか、総大将がろりこんだったなんて……
違うわい!!!ちゃんと聞け!!!
そんな鴉天狗や首なしの声に気が遠くなった。
「ごほんっ!…姫は恩人の娘でな。この前、その恩人が亡くなって、一人になってしもうたんじゃ。…恩人の希望もあって、わしが預かることにした」
「…不束者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
「そういうことでしたら、仕方ありませんな。よろしく、姫」
よろしくなーと自己紹介しながら次々にみんなが挨拶していく。
よろしくお願いします、丁寧に返す彼女。…嬉しそうだが、どこか寂しそうな彼女に、僕は話しかけることができなかった。
そんな僕に気がついたのか、じいちゃんがリクオ、と僕を手招きしながら呼ぶ。
そこでようやく、彼女に近づくことができた。
「姫、孫のリクオじゃ。リクオ、挨拶せんか」
「あっ、…奴良リクオ、です。よろしく、姫」
「よろしくお願いします、若君」
「若君って…下僕じゃないからそう呼ばなくてもいいのに」
「……、…いえ、けじめですから」
にこり、と姫は困ったように笑った。
その笑顔はどこかぎこちなくて、…本当の笑顔じゃない。
どうしてそんな顔で笑うのかはわからないけど、どこか近寄りがたいと思ってしまった。
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