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「…僕もだ」
そんな欲にかられて出た言葉は…僕の本心じゃない言葉。
彼女、歌愛は僕の偽りの言葉にまた嬉しそうに笑って、嬉しい、と口にしていた。
微笑みかける彼女に笑い返しもせずにそっと美瑠の方を見て……後悔、した。
―――今にも泣きそうな顔をしていたから。
やりすぎた、と思ったときには美瑠は堪らなかったのか顔を俯かせて踵を返していた。
気づいた時にはもう、遅い。
きっと…美瑠は今泣いている。背中が、雰囲気が、泣いているから。
悲しませるつもりはなかった……いや、こんなことをして悲しまないわけないのに、僕の欲を優先してしまったんだ。
馬鹿なことをした、と珍しく後悔しながら抱きつく彼女を無理矢理離し、その後ろ姿を追いかける。
「え、ちょっと、恭弥…!?」
周りがざわめく中、後ろで声をあげる彼女なんて目にもいれず。
ただ、泣いている…悲痛な背中を懸命に追いかける。
「美瑠!」
「……っ」
走りかけていた美瑠の腕を掴んで足を止まらせた。
けど…美瑠は僕の方を見ようともせず、ただ黙って俯いたまま。
美瑠、と再び優しく声を掛ければピクリ、と美瑠の肩が震えて。
美瑠はそのまま目を軽く擦ってから……ニコリ、と、美瑠にしては下手な笑顔で、笑ったんだ。
(どうして、そうやって、)
「どうしたの?幼馴染みさん、帰ってきてよかったね。
早く戻ってあげないとびっくりしちゃうよ」
「…何、それ…」
「何って……大切な人なんでしょ?
早く行ってあげないと今頃質問攻めにあってるかもしれないし」
ね?と、どこまでも泣きそうな顔して笑う美瑠。
…ねぇ、どうして?どうして…笑ったりできるの?
さっきは嫉妬してくれてたんじゃないの?…なんで、嫉妬したって言ってくれないの?
わからないよ。…そんな嘘をつく美瑠に、小さな苛立ちが生まれる。
意味、わからないよ。結局は僕が振り回されているだけなの?
……ムカツク。
一言、行かないで、って言ってくれるだけで、よかったのに。
彼女のことが好きなの?って、そう不機嫌そうな顔をして聞いてほしかった、のに。
「……わかった」
「―――…、…っ」
息苦しい切なさが胸をつきながら、僕は美瑠の腕から手を離し、元来た道に足を向ける。
握り締めた拳以上に痛い心を、どうすればいいのかわからないまま……
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