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この曖昧な感情を捨てれば何か変わるだろうか。
酷く甘く、温かで、生ぬるい、…君への感情を。

―――それができたら、こんなに苦しくないのに。




4 嫉妬は愛を歪ませる





美瑠に背を向けて僕の足は運動場なんかではなく、応接室に向いていた。

美瑠は迎えに行けって行ったけど…今の僕にそんな気分であるはずなく。
…寧ろ、忘れていた人間に感情を向けること自体、有り得なくて。
重い足取りで応接室のドアを開け、…困惑に眉を顰めた。



「恭弥!もう、どこ行ってたの?」

「…何で君がここにいるの?」



疑問を疑問で返す。
けど、そんなことはどうでもいい。

彼女は今日帰ってきたばかりで、僕が風紀委員長で応接室にいることは知らないはずだ。
…なのに、ここにいることが当たり前のように居座っている。
まるで最初から…自分の居場所のように。本当は…美瑠がいるべき場所なの、に。

それが、酷く僕の癇に障った。

睨むように目を細めれば今度は彼女が困惑したような表情を浮かべる。



「風紀の人に聞いたの。恭弥はいつもここにいるって…」

「…出て行ってよ。ここは君がいていい場所じゃない」



ここに入っていい女の子は美瑠だけだ。


そんな言葉は飲み込んで、机へ足を向ければ、ドンッという衝撃。
ぎゅうっと縋り付くように僕の腰に巻きつく腕に美瑠の温かさとは違う、体温。

途端に襲う、ぞわりとした、嫌悪感。



「なんで?何でそんなこと言うの…っ?
私、ずっと恭弥に会いたかった。…恭弥の隣に並べるように、頑張ったのに…!」

「…何、」

「忘れたの?あの約束…忘れちゃったの…?」



約束、と口の中だけで呟けば、頭を掠めた…幼い頃の自分。
そしてその後ろをひょこひょこと歩く、彼女。

あの日…あの日も、僕は一人になるために歩いていたけど、彼女は後ろをついてきて。


『私、大きくなったら恭ちゃんのお嫁さんになる!』


なんて、幼い頃の自分にはわからないことを言い出した彼女。
お嫁さん、が何なのかよくわからなかったけど、隣にいたい、ということだけはわかって。



『…僕の隣を歩きたかったら、それに見合った女の子になることだね』

『じゃあ、もしなれたら結婚してくれる?』

『(…結婚って何?)なれたらね』

『約束だからね!恭ちゃん』



その時、彼女はとても嬉しそうに笑ったから、まぁいいか、なんて思って。

幼い自分の無知さには呆れるけど……まさか、これのこと…?

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