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「恭弥の隣を歩けるくらいの女になったら、結婚してくれるって…約束したじゃない…」
そう涙声で言う彼女の言葉に、これなんだと気づいた。
…幼い、まだ結婚がなんなのかもわからなかった頃の話でしょ、と言えば簡単だ。
けど…幼稚であったとしても、約束は約束。
約束を破ることは僕の意志に反する。…けど。
僕の心の中にいるのは―――美瑠、彼女一人だ。それに変わりは一生ない。
「恭弥……好きよ」
「……、…」
「今でも、貴方が好きなの。貴方だけを想っていたわ。
貴方の隣に並べるように、礼儀作法のレッスンも…辛いことだって耐えてきた。
…貴方のこと、愛しているから」
好きなの…っ
そう悲痛に叫ぶ彼女に、…正直、どうすればいいのかわからなかった。
他の女なら冷たくあしらって、無視することができた。
…けど、幼い頃のことでも彼女といた時間は確かに存在していて。
別に大切ってわけでもなかったような気がするけど、咬み殺さなかったということは、幼い頃の自分は彼女のことを煩わしく思っていなかった、ということ。
―――『恭弥!』
ふいに浮かんだ美瑠の笑った、顔。
美瑠の笑った表情が好きで…もっと見ていたく、て。
『幼馴染みさん、帰ってきてよかったね』
でも…美瑠は決して僕に嫉妬したことを言おうとはしなかった。
ねぇ、美瑠は僕のこと好きだよね?
もし…もし、そうなら…彼女のことを利用することになるけど、仁科歌愛を僕の彼女にしたら、美瑠は「恭弥は私の彼氏だ」って言ってくれる…?
―――これは一種の賭けだ。
美瑠の愛を試すようなことをしているってことも、その為だけに彼女、仁科歌愛の想いを利用するということも、十分わかってる。
…けど、一度疑問に思ってしまったら、確かな形がほしくなってしまって。
こんなの我が儘だと、わかっていても……止めることは、できない。
ただ、美瑠の愛を確かめたいだけなんだ……
「…僕の側に、いてもいい」
「…!本当…?本当に?」
「……うん」
「…っ、嬉しい…っ」
ありがとう、と本当に幸せそうに言葉を零すから、何とも言えなくて。
その体を抱き締めもせず、ただその場に立ちつくした。
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