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世の中に完璧な人間などいない。
もしいるとすればそれは感情を持ち合わせていないのだろう。

…ごめんね、恭弥。私は“完璧な人間”じゃないから……だから……





5 “さようなら”と“ありがとう”を君に





次の日、ちゃんと恭弥にあの子との関係を聞くんだ、と決心して応接室に向かう。

緊張でドキドキと心臓が痛いくらいだし、少し恐いけど……逃げないって決めたんだ。

ぐっと力を入れて緊張で震えそうな手を押さえながらコンコン、とドアをノックする。
どうぞ、と恭弥の声が聞こえて、私は覚悟を決めてドアを開け放った。



「あ、」

「……っ」



応接室に入ると最初に目に入ったのは、昨日の可愛い幼馴染みの子。

どうして応接室に……ここには風紀の人間しか入れなくて……

そんな考えが思考を鈍らせながら浮かんでは消えていく。



「おはよう!どうしたの?」

「あ…え、っと……」

「そうだ!自己紹介がまだだったよね?私は歌愛。仁科歌愛よ。貴女は?」

「…美瑠。彼方、美瑠です」

「美瑠…美瑠ちゃんか!よろしくね!」



キラキラととても純粋な…私が眩しく思うくらい綺麗な笑顔で手を差し出す歌愛ちゃん。

可愛い……とっても、可愛い。
昨日も可愛いって思ったけど、今日はそれ以上。…恭弥の側にいられる、から?

この笑顔は……どこからどうみても、恋する女の子が幸せな笑顔だから……

…ぐるぐると黒いものが胸に渦巻いて、さらに劣等感を刺激される。



「…よろしくね」



そっと手を握りかえして、ぎこちなく笑いかける。


私って…本当に、狡い。

こんなに歌愛ちゃんのことを羨ましく思っているのに。
…よろしく、なんてしたくないって心のどこかでは思っているのに。

こうやって、私は歌愛ちゃんによろしくね、なんて言ってるんだから。



「…どうしたの?美瑠」

「…!あ…」



恭弥に声をかけられて沈みかけていた思考が動き出す。
そうだ……自己嫌悪に陥っている場合じゃない。

今日は、恭弥に歌愛ちゃんとの関係を聞かないと。私は…そのために来たんだから。

本来の目的を思い出してしっかり恭弥の目を見つめる。

恭弥の切れ目ぎみの黒目からは何も読みとれない。…読心術も、しない。


何を言われても、恭弥の言葉だけを…信じるから。

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