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あの時の僕はまだ子どもすぎて、美瑠の気持ちなんてわかっていなかったんだ。
…ごめん、こんなの…言い訳だね。
6 すれ違いは加速して
何か言っていた仁科を無視して、いや正確には何も聞こえなくて、応接室から屋上へ向かった。
美瑠から返されたリング……この意味は、一つしかない。
―――別れよう。
そう、美瑠に言われたんだ。
返されたとき、頭が真っ白になった。嘘、やめて、ありえない。
…ありえない?ありえない、はずないじゃない。
僕は例え嘘でも仁科歌愛と“付き合っている”と肯定したんだ。
それを聞いて……美瑠が、別れようと言うのはごく自然なこと。
……僕は、期待、していたのかもしれない。
別れたくないって、言われることを。
私も恭弥のこと好きだから、諦めたくないって、言われることを。
―――もしかして、美瑠…僕のことそんなに好きじゃなくなったのかも……
だからあんなにあっさり僕と別れて……
「……あ……」
屋上のドアをあけると一点に僕の視線が釘付けになる。
…美瑠が、うずくまっていたから。
気配を消して静かに近寄ると聞こえてくる寝息。…寝てる……
もっと近くまで寄って…ハッと息を飲んだ。
…美瑠…泣いてる………
夢の中まで泣いているのか、その涙は止まることを知らない。
「…美瑠……」
名前を呼んだだけなのに、心が震える。
けど、手の中にある、冷たいシルバーリングが熱を奪って僕の思考を冷やしていった。
別れた。…もう、美瑠に、堂々と触れられないんだ………
「…っ…すき、だ…」
今更、なんて言わないで。
涙を拭おうとしたけれど、体が触れる一歩手前で止まる。
怖い……寝ているけれど、拒絶されることが……、…怖い…?
僕にも、怖い、なんて感情あったんだ……それこそ、今更。
「美瑠……」
さようなら、なんて、嫌だ。
(依存しているのは、僕の方)
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