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心臓が、とまるかと思ったんだ。

君が勝って、すぐに……倒れる、なんて。
理解した瞬間、僕は……―――





7 君に触れたいんだ、どうしようもなく





「美瑠っ!!」

「…!きょう、や…!?」



日陰に寝かせている美瑠の隣に驚く歌愛の姿があったが僕はそれを無視して美瑠の側に駆け寄った。
美瑠の側には恐らく審判をしていたのだろう、テニス部の部長がスコア表で扇のように風を送っている。

美瑠、と何度も呼びかけたけど美瑠は苦しそうに息をするだけで目を覚ましてくれない。

その苦しそうな姿に動揺しながらも冷静になれ、と必死で頭に命令する。
美瑠の苦しみを少しでも和らげたかったら…冷静に対処しないと。

焦りで白くなりかけた頭を一つ息をついて元に戻すと美瑠の状態を確認する。

見た限りでは怪我はしていないけど、顔が暑さからか真っ赤。
日焼けもしているけど…体が異様に熱いし、汗も尋常じゃないくらいかいている。
これは…熱中症……脱水症状も含まれている、かな。



「美瑠ちゃん、熱中症で倒れちゃって…!」

「…その水もらうよ」



熱中症になった場合、急にたくさんの水を飲ませてはダメだ。
…本当なら食塩が適度に入った生理食塩水とかがいいんだけど……

恐らくテニス部の部長だから知識があったのだろう。涼しい場所という条件はそろっている。

送風していたおかげで大体の体の熱がとれてきているし……


あとは……美瑠が、水を飲めばいい。

風を送っていたテニス部の部長から水を奪って、僕がそれを煽って口の中に含む。

そして……美瑠に、キスした。



『……っ!』

『キャ――――!!』



周りで応援していた生徒達が騒いでいるのを無視して軽く美瑠の唇を舐めて口を開けさせる。
そして舌で調節しながら水を美瑠に飲ませていった。

傍目から見たら……深いキスしてるように見えるだろうね。
でも今はそんなことどうでもよかった。

ちょっとずつ水を飲ませていけば美瑠の苦しそうな顔が息ができずに苦しい、という顔になっていく。


少しだけ処理しきれなかった水が美瑠の口の端から流れ落ちるのを見ながら、僕はキスをやめることはできなかった。

……とめることなんて、できるはずがないんだ。


ずっと…ずっと、触れていたかった。

久しぶりの美瑠とのキスは、僕の胸を狂おしいほど容赦なく締め付ける。


もっと…もっと、キスしていたい。…抱きしめて、愛してるって…伝えたい。


美瑠に触れてしまったことで僕の中の気持ちのストッパーが外れてしまって、水がなくなったにも拘わらずそのまま口づけた。

美瑠の意識はないけど…それでも、美瑠とのキスがこんなにも嬉しいなんて。


…起きないで……

お願いだから…まだ…このまま、寝てて……


あと、少しだけ……このまま、キス、させて。



「…はっ……」



ゆっくりと…本当に名残惜しそうに唇を離せば僕と美瑠の間に銀の糸が伝う。


美瑠、美瑠、美瑠……
好きだよ…愛してる、よ……っ
勝手な、想いだとわかってるけど……でも……っ

好きなんだから…しょうがないじゃないか…!

この想いを無視することなんて、到底できない…っ!


そんな思いだけが溢れて…ぎゅっと一度強く抱き締めて美瑠を優しく抱き上げる。
真っ赤になって固まってる草食動物を無視して美瑠をお姫様抱っこしたままコートから出た。

目指すのは、応接室。
早く休ませてあげたくて、僕の足は応接室へと急いでいった……


…歌愛が、美瑠とのキスにショックを受けてコートから飛び出していたことも知らず。

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