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応接室のドアを静かに開けて美瑠を優しくそっとソファーに寝かせると草壁にスポーツドリンクを買ってくるように命令する。
恐らく、というより絶対草壁は美瑠が倒れたことを知っていたからとても焦ったように頷いて外に出て行った。
…あの様子だとスポーツドリンクだけじゃなく色んなものを買ってきそうだね。
ピッと携帯の電源を落として机の上におくと、静かに美瑠が寝ているソファーの淵に座った。
…まだ、意識は戻らないのかな……
応接室はクーラーがついていて涼しいから体を冷やしすぎるかもしれない。
そう思い立ったら美瑠がここにいたときに使っていたブランケットをかけてあげる。
よく、寝不足で応接室で寝ていたよね……懐かしいな。
美瑠の寝顔を見るのも久しぶりで、無意識のうちに手を伸ばし、その柔らかな髪を撫でようとしていた。
…けど。
ぴたり、と僕の手は途中で止まり…ほんの少しだけ躊躇してしまった。
――――美瑠に触れていいのか。
まだ安らかな寝息を立てて意識のない美瑠の顔を見つめて、小さく息をつく。
できるだけ息を殺してドキドキする胸の高鳴りを押さえながら優しく頭を撫でる。
ふわり、ふわり。
そんな感触が僕の手に伝わって自然と優しい笑みがこぼれた。
こうやって、触れれるのがドキドキするなんて。
…今までこんなこと、考えなかったのに。
髪を愛おしげに梳いていると次第に髪から美瑠の顔へと手が移る。
するりと赤く染まった柔らかな頬を撫でて、親指の背で美瑠の唇をなぞった。
赤くて、ふっくらとした唇。
僕は吸い寄せられるように唇を寄せ、軽く啄むようなキスを落とす。
ゆっくりと、味わうような、キス。
――――心から、愛おしいと思わせる、キス。
ちゅ、という音が心地よくて。
触れる感覚がくすぐったくて……気持ち、いい。
…それに今までぽっかり空いていたような心の空白が満たされていくのがわかる。
「ふ…っ、ん…美瑠……」
無意識のうちに呼んでしまった名前。
ドキリと、胸が締め付けられたけど、もう一度だけそっと美瑠、と呼ぶ。
触れることで得られる安心感……
そして…決して応えてくれない寂しさ……
このまま時が止まってしまえばいいのに…―――
たくさんの感情が入り交じって、それでもキスがやめられなかった。
ちゅっと、口付ければ「ん…」と美瑠が身じろぐ。
その瞬間、我に返ったようにバッと勢いよく顔を離し、思わず顔を赤くしてしまった。
バクバクと心臓が煩く音を立てて、思わず口元を押さえる。
キスしたの、バレた……?
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