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「ごめんね…?あ、なら…、……」

「…?美瑠?」

「…ごめん、なんでもないよ」



困ったように苦笑しながら首を振った美瑠に違和感を感じる。

…まさかこのとき「お弁当を作ってくるよ」といいかけて、歌愛の存在を思い出し「もう私じゃその資格がないんだった…」と傷ついていたことも知らず。

違和感に眉を顰めているとドアが突然大きな音を立てて開いた。



「委員長、大変で…!」

「何。くだらないことなら咬み殺すよ」

「あ、草壁さん!」



固まった。文字通り。

あの巨体が美瑠が起きていて僕と話していることに固まった。
…恐らくまだ美瑠が目を覚ましていないと思っていたのだろう。

それであの煩く入ってくるなんて許せないな。

覚ましていても僕と和やかに話すことはないだろう、と思っていたのかもしれない。
…その心情が手に取るようにわかって、イラッとしてしまい、思わず声が低くなる。



「早く言え。じゃないと咬み殺す」

「恭弥…;草壁さん、何か急ぎの用があったんじゃ?」

「…はっ!実は、先ほど街のほうで乱闘がありまして!」

「君達でそれくらい処理しなよ」

「も、申し訳ありません…しかし、中々収まらず、店のほうに被害が出始め…」

「……、…」



申し訳なさそうに呟き、報告の内容にさすがの僕も迷ってしまう。
…この機会を逃せば、美瑠と二人っきりにはもうなれないかもしれない。

二人っきりになれれば、僕の気持ちを正直に言おうと思っていたのに……なんてタイミングの悪い。


けど、乱闘騒ぎをそのままにしておくわけにはいかない。
僕の町を傷つけることなんて、絶対に許さないのだから。風紀が乱れる。

美瑠と並盛…絶対に天秤にはかけたくないものが、今かけられている。

…どちらがより大切か。
そんなもの、わかるはずない。両方とも僕にとってはなくてはならない存在。

本気で行こうか迷っていると、



「恭弥、何に悩んでるの?早く行かないと!」

「美瑠…!?」



悩んでいた数秒間の間なんてなかったかのように美瑠はあっさりと並盛を取っていた。

早く行かないと、と急かす美瑠に驚いていれば、美瑠はふわり、と嬉しそうに微笑んだ。



「恭弥は風紀委員長で、並盛の秩序でしょ?
並盛の風紀が乱れるなんて、私も許せないもの。…元風紀委員としてね」



だから、早く行って。


そうそれが当たり前のように。
…それが本当の答えのように笑って言うから僕の中で並盛への愛情が強くなってしまう。

美瑠も愛してくれている並盛……

それを守るのが、僕の使命であり…義務であり、愛情。


ごめんね、と一言断って僕は学ランを翻し、急いで走り出した。


…美瑠のいってらっしゃい、という声を背に……

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